東京オリンピック・パラリンピックが近づき、政府はワクチン接種を進めるべく躍起。そのことの是非を巡って世論が分断の真っただ中にあって、かなり今さら感は拭えないが、日本におけるカジノ計画は完全に宙に浮いたようだ。
「カジノ誘致の有力候補地である和歌山と横浜から事業者が相次いで撤退を表明したのです。5月12日には和歌山・マリーナシティでの設置に名乗りを上げていたサンシティ・グループ(マカオ)が、17日には横浜・山下埠頭のギャラクシー・エンターテインメント(同じくマカオ)が日本での計画からの引き上げを表明しました。前者は、日本のカジノ計画に不確定要素が多いことのリスクを理由にしていて、後者は今後も対話は続けるとはしていますが、つまりは日本でのカジノ設置を巡る環境が好転しない限りは継続はできないと言っているようなものです」(経済ジャーナリスト)
サンシティが言うように、確かに日本版カジノの実現に関してはあまりにマイナス要素が多すぎる。
海外ではコロナの流行が後押しする形でオンラインカジノが普及していて、ニュー・ノーマルの生活様式はカジノの在り方をも大きく変えつつある。となれば、ポスト・コロナの時代をも考えた場合、果たして人々が以前のようにわざわざカジノに足を運ぶかはかなり怪しい。「習慣」が変わってしまったからだ。
また、菅首相のお膝元であるがためにもともとはカジノ建設には「白紙」だった林文子市長の“翻意”で前のめりに転じた横浜では、8月22日に市長選が予定されており、最大の焦点となるであろうカジノの是非が問われることになる。カジノ反対の公党、市民グループらが擁立する対立候補に現職の林市長が敗北することがあれば、一気に横浜での設置はとん挫する。
こちらも自民党の重鎮、二階俊博・自民党幹事長の地元の和歌山では、サンシティの撤退で残る事業者はクレアベストグループのみとなったが、同社は投資会社だ。だからカジノの設置に当たってはさらにカジノ運営の実績がある会社を探してこなければならないが、アメリカ大手のウィン・リゾーツやラスベガス・サンズがもっと早い段階で日本からの撤退を表明している中、一体どこから連れて来られるのかははなはだ心もとない……。と、数え上げればキリはないが、そもそもカジノ事業者自身がコロナ禍でボロボロなのだ。
計画を巡るゴタゴタだけでなく、カジノが孕むマイナスイメージをも助長する事態も発生している。
「5月16日に、国内初のジャンケット業者の前社長が業務上横領容疑で大阪地検特捜部に刑事告発されていたことが判明したのです。ジャンケットとは、海外のVIPを呼んできてホテルの宿泊から送迎など身の回りの全ての手配をする世話役みたいなものですが、カジノの成功においてはジャンケットは必須の存在です。コロナ禍でカジノ推進が停止している中、特捜部の捜査が進んで事件化すれば、前に秋元司・衆院議員がカジノ汚職で逮捕されたことに相まって、さらなるイメージ悪化はまぬがれないでしょう」(前出・ジャーナリスト)
前の安倍政権から菅政権に引き継がれた“肝いり”案件だったカジノ推進。完全に暗礁に乗り上げたようだ。