ハマのドンは「首相辞めないと」”菅退場”が宣告された横浜市長選挙

 8月22日に投開票があった横浜市長選挙は、立憲民主が推薦して共産、社民らの野党が推す山中竹春・元横浜市立大教授が圧勝。自民の地元の名門政治家で菅首相も全面支援した小此木八郎候補を最終的にはブッチ切って勝利し、結果として見れば「アンチ菅」の色が際立った形だ。

 選挙戦を取材してきた全国紙記者はこうまとめる。

「結局は“ハマのドン”として知られる藤木幸夫(元横浜港運協会会長で、現横浜港ハーバーリゾート協会会長)さんには逆らえなかったということでしょう」

 その藤木氏は、「菅(首相)も今日あたり辞めるんじゃないの? 辞めないとしょうがないだろう」と言い放ったものだ。

 当初、横浜市長選の最大の争点は横浜市のIR(カジノ)誘致の是非だった。ところが元々反対論者の山中氏と、反対に転じて出馬した小此木の一騎打ちとなり、カジノ誘致の是非は消失。実質的には現在の自民党体制と菅首相のコロナ対応のあやふやさ、そして、カジノ反対で小此木・菅を葬り去ろうとする”ハマのドン”藤木氏の動向がポイントとなり、何が争点だったのかは正直、不明。「カジノ反対」と「コロナ対応がマズい」と自民党や菅政権を責めたところで本来は横浜市長選挙とは無縁の話なのだが、結果としてはその“熱”だけで選択がなされたことになる。

「注目すべきは8人が乱立した候補者で、田中康夫氏や松沢成文氏がかなりの票を得たことです。ということはつまり、カジノやコロナに引っ張られてまともな政策論争が行われなかった。加えて、小此木票だけではない『反菅』の野党票がいかに膨大だったかということです」(前出・記者)

 その中でも特に損をしたのが、山中氏擁立の責任者である江田憲司・立憲民主代表代行と郷原信郎・元東京地検特捜部検事・弁護士のようだ。別の全国紙記者が語る。

「江田さんはスポーツビジネス推進ということで、ギリギリまで横浜DeNAベイスターズ初代球団社長の池田純氏の擁立にこだわり、だめだと分かると今度は山中氏の擁立に回りました。担げる神輿に値する人物であれば、という節操の無さが浮き彫りになりましたね。そして郷原さんは、得られると思っていた立憲民主の推薦が得られないと分かると、今度は落選活動を始めて、山中さんのマイナス情報を流したりした。こちらもちょっとみっともなかった」

 ただ、この選択が果たして横浜市に良かったかについては疑問を投げかける。

「山中さんは大学教授ですから行政は素人。一方、菅首相、小泉進次郎、河野太郎の両大臣らを輩出する神奈川県はズブズブの自民党地域で、林文子・前横浜市長は3期12年も務めたのだから、横浜市役所の幹部は全部ゴリゴリの政権派です。まずはこれを一掃するのに1期4年を要するでしょうね。つまり、4年間は横浜市役所の役人と市長の対立のみで費やされそうです」(同前)

 今回の選挙は国政にも関わって重要。横浜の選択が本当に正しかったのかは、自らの行く末と共に問われなければならないだろう、

(猫間滋)

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