「鬼滅の刃」一緒に観ませんか?「鑑賞勧誘ツイッター」に潜む危険なワナ

 原作コミックが累計1億部を突破し、テレビアニメ版も社会現象になるほど大ヒットした「鬼滅の刃」。10月16日には「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が公開され、ツイッター上では「鬼滅の刃の映画を一緒に観に行ってくれる人募集中」と映画館への同行者を募る投稿で溢れている。

 ツイッター上でのキーワードの広がりを検証するサイトで調べたところ、10月9日〜17日(18時時点)の期間に「鬼滅の刃」「映画」「募集」というキーワードを含むツイートが378回も投稿された。

 このように、近年はSNS上で不特定多数に向けて、映画鑑賞などの同行者を募る発信をすることは珍しくないが、IT犯罪に詳しいジャーナリストはこう警鐘を鳴らす。

「 映画などの同行者を募集している人の大半は、一人で見るのが寂しい純粋なファンです。鑑賞後に感想や考察などを語り合える友達がほしいのでしょう。しかし、中には未成年者を狙った悪質な募集をかける輩もいます。人気作品の場合、いきなり映画館に足を運んでも席をとれないため、事前にチケット予約する必要がありますが、基本的に映画館の予約はクレジットカード決済となります。当然、未成年者は自由に使えるクレジットカードなど持っていないため、大人を頼らざるを得ない。そこに目をつけて、邪な気持ちから未成年者を誘い出す大人もいるようです。今回の『鬼滅の刃』の映画でもそうしたことが起きる可能性はゼロではありません」

 10月15日には群馬県の自称アルバイトの男が未成年女性を自宅などに住まわせていたことで逮捕されており、車での連れ去りや監禁などを含めた未成年者誘拐事件が全国で相次いでいる。

 犯行に至るまでの具体的な手口について、前出のジャーナリストが解説する。

「基本的に狙われるのは家出願望がある少年や少女。首都圏よりも地方で暮らすパターンが多いですね。映画をダシにした未遂事件の報告も聞いていますが、その手口は単純。SNSや掲示板などで『映画館の予約は僕がするので、みんなで●●を観に行きましょう』と募集をかけて連絡がくるのを待ちます。あくまで主催者の立場を取っているのがポイント。また、前もって女性の同行者がいることを伝えて安心させておくのです。当日、合流した際に『もう一人の同行者が急遽来られなくなった』と伝え、結果的に2人きりでの映画鑑賞に持ち込むのです。映画が終わったら、やはり作品の感想などで会話が盛り上がりますから、親密さは一気に増します。私が過去に取材したケースでは、 人気の映画を鑑賞後、食事をしていたら急に眠くなって、加害者男性の自宅に車で連れ去られそうになったという事案もありました。誘拐のために睡眠導入剤をこっそり忍ばせていたと推察されます」

 なんとも卑劣な犯罪だが、この話で思い起こされるのは、現在公判が行われている2017年の「座間9遺体事件」だ。このとき加害者の男は、ツイッターで「死にたい」「自死」「安楽死」などとつぶやいている自死願望のある女性を誘い出して殺害した。たかが映画の「同行者募集」と侮ってはいけない。今般の「鬼滅の刃」が、未成年者を狙った犯罪に悪用されないことを願うばかりだ。

(橋爪けいすけ)

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