「恩赦」と「安倍政権」ホントの話(1)改元で受刑者たちも色めき立つ

 4月1日に発表された新元号「令和」。その名称もさることながら、水面下で駆け引きが繰り広げられているのが「恩赦」である。いわゆる受刑者の罪の減免となるだけに、その運用は中立公正を極めるはず‥‥と思いきや、実態はその時の時代背景にかなり左右されているのだ。はたして盤石な安倍政権下で恩赦はどのように行われるのか?

 新元号決定でひそかに注目を集めているのが、93年の皇太子ご成婚以来、26年ぶりとなる恩赦だ。5月1日の新天皇即位に伴う10月の「即位礼正殿の儀」を受け、今秋にも実施される。

 昭和から平成への代替わりでは、89年2月の、昭和天皇崩御の際の大喪の礼、90年11月の今上天皇の即位礼正殿の儀に合わせて計2回の恩赦が実施された。今回は10月の即位に伴う即位礼正殿の儀に合わせたもので、今上陛下の退位に合わせた実施は見送られる方向だ。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が、苦笑まじりにこう話す。

「一昨年12月に改元日程が決定してからというもの、全国の刑務所内では恩赦の話題で持ちきりだそうです。ちょっと口達者で事情通を気取る受刑者が『恩赦で出られるぞ』くらいのことを言うものだから、正確な情報を持たない周囲の者たちが過度に期待しているらしい」

 そもそも恩赦とは「国家刑罰権」を消滅させ、裁判の内容を変更させる制度。すなわち、裁判で確定した刑罰を特別に許す、または軽くすることを指している。憲法に基づき、天皇が内閣の助言と承認の下で行う国事行為の一つだ。

 恩赦には、有罪判決の効力を失わせるなどの「大赦」、特定の人の有罪判決が無効となる「特赦」「減刑」「刑の執行の免除」、有罪判決で停止された公民権などの資格が回復する「復権」の5種類がある。

 実施方法は、対象となる刑や罰などを政令で決めて一律に対象者を救済する「政令恩赦」と、本人の申請に基づいて中央更生保護審査会が審査する「個別恩赦」に分かれる。個別恩赦には内閣が適用基準を設け、一定期間に限って行う「特別基準恩赦」と、日常的に行われる「常時恩赦」とがある。

 世間の注目が集まるのは国の慶弔時などに実施される政令恩赦と特別基準恩赦だが、常時恩赦も随時実施されており、毎年20〜40件が対象となっている。

 今上天皇の即位の礼の際は、政令恩赦で約250万人、特別基準恩赦で計398人(特赦267人、減刑77人、刑の執行の免除10人、復権44人)が対象となった。皇太子ご成婚の際は特別基準恩赦が実施され、対象者は計1277人(特赦90人、減刑246人、刑の執行の免除10人、復権931人)だった。

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