菅総理の誕生で、法政大学出身者として初の総理大臣が誕生した。これで東大・早稲田・慶應・明治・立教・法政のいわゆる東京6大学では立教だけが未だに首相を輩出できていないことになり、教育界でも今回の新総理の誕生は話題となった。
ところが、当の法政大学が諸手を上げてこの“偉業”を祝ったかと言えばそうではなく、かなりの“塩対応”でこれもまた注目を集めていた。そして今回の菅首相の日本学術会議の任命見送り問題が起こった後で振り返れば、こうなることも見越していたかのようにさえ思える。
まずは首相誕生の9月16日のこと。大学HPに掲げられたメッセージは極めてそっけない。菅氏が総理に選出された事実を記述した上で、
「ご活躍を祈念いたします。以上」
この短すぎるコメントに、週刊誌記者はこんな解説を加える。
「法政大学総長の田中優子さんは江戸文化の研究が専門。ですが、例えば選択的夫婦別姓制度に賛成だったり、市民派雑誌として知られる『週刊金曜日』の編集委員を務めた履歴など、いわゆるリベラル派の知識人で、政治的信条の面では菅首相と真っ向から対立する人です。そういう因縁もあって、『だからこその塩対応では?』との観測が広がりました」
事実、過去の田中氏の発言を見ると菅氏に対してはかなり素っ気ない。
「例えば田中さんは前沖縄県知事の翁長雄志さん(故人)について地方紙で言及した際、法政大学にある沖縄文化研究所の所長の大学教授と翁長氏の交流について触れた上で、辺野古の新基地建設での埋め立て問題で中央政府と激しく戦った翁長氏の活動を振り返っています。そしてこの時、田中さんと翁長さん、菅さんは同じキャンパスにいた学生だった奇縁について語っているんですが、菅さんについてはそのまま何も触れていません。あたかも敢えてスルーしたかのようにです」(前出・週刊誌記者)
もちろん辺野古の埋め立てを進めたい安倍政権にあって、官房長官だった菅氏は翁長氏と対立した当事者だ。
そして今回の学術会議問題。塩対応は批判に変わる。大学HPにアップされた「日本学術会議会員任命拒否に関して」と題された10月5日付のメッセージでは、前回はわずか62文字のメッセージだったのに対して、今回は非常に長々と問題を指摘した上で、
「この問題を見過ごすことはできません」
とあるのだ。しかも今回は田中総長の名前入りときている。
若者には令和おじさんとして人気のある菅首相だが、出身校からその偉業が称えられるどころか矢まで飛んでくる事態になっているのはちと悲しすぎやしないだろうか。
(猫間滋)