今年4月から一部地域で解禁された日本版ライドシェアサービス。そうした中、JR東日本の喜勢陽一社長は「毎日新聞」の取材に応じ、7月16日配信の記事の中で興味深い発言を行っている。
ライドシェアについて直接的な事業参入は否定したが、一方で「何らかの関わりを持って地方の課題に向き合うことはありうる」とも語っていたからだ。
「社会問題になっているバス運転手の不足による路線バスの廃止・減便に加え、都市部以外の地域ではタクシー不足も顕著です。地方の交通網整備は大きな課題となっており、JR東日本はライドシェア事業会社の新規参入の促進という形で間接的に関与する方針なのでしょう」(交通インフラに詳しい業界紙記者)
同社は6月、「Beyond the Border」と題した中長期のビジネス成長戦略を発表。Suicaの利便性を高めることを目標に掲げている。将来的には、アプリ上で鉄道と到着駅から先の別の公共交通機関を一括手配できる仕組みを視野に入れており、そこにライドシェアが必要というわけだ。
「こうした複数の公共交通機関での移動を一括的に提供するサービスのことを『MaaS(マース)』と呼び、ヨーロッパでは『Whim』や『moovel』など複数の専用アプリが普及しています。到着駅で次の交通手段を探す手間が省け、ライドシェア事業会社にとってもJRと連携することで効率的に運用できます」(同)
ちなみにJR西日本は、タクシーの配車システムなどを手がける電脳交通と共同で地方版MaaSの自家用有償旅客運送用支援システムを開発。18年春に廃止となった三江線の沿線自治体のひとつ、島根県邑南町を中心とした地域に導入され、鉄道廃止後の地域住民の重要な足となっている。
「ライドシェアはタクシーや運転代行と違って2種免許を必要せず、ウーバーイーツなどのように空いた時間を利用して副業として働くことも可能。これによって地方での移動が便利になれば鉄道の需要喚起にもつながり、今後はJR各社が力を入れていくはずです」(同)
現在、ライドシェアが解禁されているのは全国12区域だが、こちらも段階的に拡大される見通し。鉄道のきっぷと駅到着後のライドシェアが同時手配できるようになれば便利だけに、1日も早い実現を期待したいところだ。