日本において人を最も殺している野生生物といえば「ハチ」だ。
毎年10人~20人がハチに刺されて亡くなっており、2008〜18年の11年間で死亡した人の数は191人にものぼる(厚生労働省「人口動態統計」より)。
特に今のように猛暑の夏から秋にかけての時期は、凶暴な性格と猛毒を兼ね備えた「スズメバチ」への注意が必要だ。
すでに今夏でもハチによる死亡事故は起きており、6月に静岡県の男性が草刈り中に刺されて死亡。海外に目を転じても、フランスでは食事中の男性の口にハチが飛び込み、舌を刺されて死亡するという事故も報告されている。
そんな危険生物であるハチは部屋に入り込んでくる危険性もある。最近、被害に遭ったばかりの神崎真夜さん(36歳、主婦、都内在住)は、当時の状況をこう振り返る。
「先週の日曜日、ベランダで洗濯物を干していると、スズメバチが開けっ放しの窓から部屋に入っていき、部屋でくつろいでいた旦那をめがけて飛んでいきました。旦那はハチを手で払いのけようとして見苦しく暴れ、興奮したハチは旦那の腕をズブリと刺しました。その後、運良くハチは窓から逃げていきましたが、旦那はあまりの激痛に悶絶。1週間経った今も腫れが引いていません」
では、もしもハチが部屋に入ってきたときはどう対処すればいいのだろうか。都内のハチ駆除業者の担当者が解説する。
「大声を出したり手で振り払ったりせず、まずは落ち着くことが大切。こちらがハチを刺激しなければ、むやみに向こうから攻撃してくることはありません。ただし、スズメバチがアゴをカチカチと鳴らしているときは威嚇している合図。また、基本的にハチは濃い色で動くものを襲ったり、甘い匂いの香水や整髪料に寄ってくる習性があるので、そうした条件下の場合は静かに一旦安全なところに避難します。そこで白い服に着替えるなどの準備が整いハチの威嚇音がおさまったら、ハチは明るい方へ向かう習性があるため、部屋を暗くして窓を開けます。夜の場合も、窓を開けて外に懐中電灯を置いたり車のライトを照らしてハチを誘導しましょう。木酢液やミント系などハチが嫌がる匂いの芳香剤を部屋に置いて追い出すというのも手ですね。それでも出ていかない場合、最終手段として頭や肌を完全防御した上で、殺虫剤で殺処理に出るという方法もありますが、万全を期したいのではあれば、家の周囲に巣ができている可能性も踏まえて、業者を呼んで駆除を依頼しましょう」
また、普段から部屋にハチが入ってこないようにするための予防策もあるという。
「ベランダなど窓がある場所に、定期的にハチが嫌がる匂いのスプレーを散布したり、芳香剤を置くようにする。あるいは、洗剤や柔軟剤もミント系に変えるなどの対策も有効です。洗濯物にハチが紛れ込むこともあるので、その都度、衣服を確認することも大切。他には、網戸を設置したり隙間テープを貼って侵入経路を塞ぐことも大切です」(前出・ハチ駆除業者担当者)
たとえハチが部屋に入ってきても慌てずに“相手”を刺激しないことを心がけよう。
(橋爪けいすけ)