伝統の阪神・巨人戦に新たな“因縁”が勃発した。8月5日に甲子園球場で行われた一戦、試合前の巨人ベンチで、円陣の声出しを任されたのは、前日にプロ1号となるホームランを放った北村拓己内野手だった。その日の阪神の先発は676日ぶりの勝利を目指す藤浪晋太郎投手。かねてから制球難がささやかれ、“死球グセ”が指摘されているだけに、大役を任された北村選手はマスク装着のうえで、こう言って巨人ナインに気合を注入したのだ。
「相手ピッチャー藤浪さんですけど、当てられる前にしっかりバットに当てて、初回からエンジン全開で行きましょう!」
この動画が読売巨人軍の公式ツイッターにアップされると、またたくまにネット上に拡散。《制球難に苦しむ藤浪をディスって何が面白いのか》《藤浪がこの動画を見たらまたイップスになってまうやんけ!》などと批判が殺到する事態になった。
「球団側はすぐに動画を削除して非を認めていますが、北村選手の声がけ自体は、それほど責められるべきものではないという声もあがっています。実際、藤浪投手にぶつけられた選手は多いですからね。しかも、今シーズンはまだ勝ち星には恵まれていないものの、投球内容は14勝をあげた2015年シーズンの輝きを取り戻しつつあります。とくにストレートの伸びはバツグンですから、万が一、頭部に死球をもらえば命の危険にもさらされかねない。さらに今シーズン開幕当初には小林誠司捕手が、阪神の守屋功輝投手にぶつけられて左尺骨を亀裂骨折。長期離脱を余儀なくされました。北村選手の声がけには、『早めにノックアウトしてケガを予防しよう』という意図があったと推察されます」(スポーツ紙記者)
実際、SNS上では阪神と巨人、双方のファンが入り乱れての論戦が勃発。《藤浪の死球の多さは事実なんだから注意喚起くらい別にいいじゃん》《藤浪投手を嘲笑するかのようなコメントとそれをヘラヘラしながら聞いている巨人ナイン、メチャ腹立つ。それをネットにアップする広報もどうかしてる》《藤浪はこれを発奮材料に次の巨人戦では完封してほしい》といった声が見られた。実際、北村選手の「当てられる前に」という発言は“不謹慎”にあたるのだろうか。球団関係者はこう語る。
「2019年に行われた阪神とソフトバンクのオープン戦では、試合途中から藤浪投手がマウンドにあがったところ、工藤監督は右打者に次々と左の代打を送りこみ、結果的に対戦した7人全員が左打者という結果になりました。また同年の中日とのオープン戦ではバッター全員が左打者というオーダーに驚きの声があがったものです。『選手を壊されたくない』というのがチームのホンネかもしれませんが、そうやって心理的プレッシャーを与えるのも、プロとしては当然。藤浪投手も越えなければいけない壁だと理解しているはずですよ」
それではなぜ、巨人はこの“藤浪罵倒動画”を削除してしまったのだろうか。前出の関係者が語るには……。
「動画をよく見るとわかるのですが、北村選手が藤浪投手について言及した直後に、誰かが背後から“カンチョー”するような形で鋭いツッコミを入れているのがわかります。北村選手も犯人が誰だかはわかっていない様子。『紳士たれ』をモットーとする球団だけに、グラウンドで“カンチョー”はさすがに問題アリだと判断したのでは…そんな冗談とも取れる憶測も広がっています」
今回の騒動でさらに盛り上がりを見せそうな伝統の一戦。今後も、両チーム「死球ゼロ」で終えた8月5日の試合のような、好ゲームを期待したい。
(渡辺俊哉)