平成の競馬“珍”&“怪”事件18(3)「被害を与えた馬に騎乗」の謎

 当時、2人は熱愛真っただ中。ところが不幸にして、居酒屋でむつまじく密会する姿を写真誌に激写され、キャンセルの「本当の理由」がバレてしまった。

「当然、JRAからは厳重注意を受けましたが、なぜか、騎乗停止処分はなし。でもこの一件以降、パドックに幸四郎が現れると『馬よりも女のほうが大事なのかよ!』というキツイやじが飛ぶようになった。同時に厩舎や馬主の信頼を失っていき、騎乗数も次第に減っていきました」(専門紙トラックマン)

 あぁ、自業自得。

 これは余談になるが、お酒大好きの幸四郎は11年8月に京都市内の飲食店で、酒が絡んだケンカ騒動も起こしている。地元飲食店関係者が苦笑しながら回想するには、

「相手に殴られて左頬を骨折したんですが、医者に診てもらったところ、骨年齢が70歳の老人と同じだと診断されたそうです」

 過酷な減量のため、ロクに食べずにカラ酒で済ませていたのが原因だったという。

 同じ馬主の馬が2頭出走する際は何らかの協力体制が敷かれるものだが、その真逆のレースが存在した(17年9月18日・中山1R・3歳未勝利戦)。

 丹内祐次(33)が騎乗した2番人気マイネルサリューエが最終の直線で、宮崎北斗(30)の6番人気マイネルアンファンに並びかけ、右ムチを何度も何度も激しく連打したのだ。当然、馬はどんどん左にヨレて体当たり。宮崎の馬を大外まで追いやってしまった。

 そのかいあって、僅差で1着入線するが、直ちに審議の赤ランプがつく。それはそうだろう。見ているファンが「さすがにあれはない。悪質すぎる。どうして同じ馬主の馬にタックルを繰り返すのか、理解できない」とアキレ返るほどだったのだから。

 審議の結果、マイネルサリューエは進路妨害で2着に降着となり、2着に入線したマイネルアンファンが1着に繰り上がった。そして、丹内には16日間の騎乗停止処分が下される。

 だが、これで終わったわけではなかった。さる厩舎関係者が振り返る。

「奇妙なことに、今年3月10日の阪神・甲南ステークスには、被害馬マイネルアンファンの背中に丹内が乗っていたんです。これを見た同馬のクラブ会員からは『それはないだろう』とブーイングが噴出したといいます」

 騎手がゴール後、近くの騎手とハイタッチをするシーンはよく見られるが、頭を殴って喜びを表現したのはM・デムーロ(40)ぐらいだろう。

 それは03年4月20日の、皐月賞でのことだった。直線で抜け出した田中勝春(48)騎乗のサクラプレジデントに、内めから脚を伸ばしてきたデムーロのネオユニヴァースが並びかけ、激しい叩き合いとなる。

 ゴール前でネオユニヴァースがわずかに出て勝利するが、左手を振り上げて場内のファンにアピールするやいなや、その手を勢いよく勝春のヘルメットに叩きつけ、ドツいたのだ。ガクンと頭を下げる勝春。さぞ驚いたことだろう。競馬サークル関係者によれば、

「それを見ていたファンは、珍場面に大笑いだった。これが、デムーロにとってJRAの初GⅠ勝利。テンションが上がって『やったぜ!』とばかりに叩いてしまったと、のちに競馬メディアに話していました。やられた勝春は『ノープロブレム』と言って、二人の間にしこりが残るようなことはありませんでしたね」

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