現在、米国で大きな社会問題となっているホームレスの増加。その背景にはコロナ禍に行われていた住宅支援などの救済策の打ち切りが影響しており、家賃を払えない人々が再び路上、または車上生活を強いられたためだ。
米国住宅都市開発省(HUD)によると、その数は23年1月時点で65.3万人。これは島根県の人口に匹敵するが、それから2年近く経っているため、さらに増えている可能性が高い。ただし、専門家の間ではトランプ次期大統領の就任後にホームレスの数が減少に転じると予測する者も少なくない。
「彼らの中には不法移民が相当数存在し、強制送還される可能性が高いからです。実際、トランプ氏が前回大統領に就任していた4年間は、ホームレスが減少傾向にありました」(米国在住ライター)
ところが、バイデン政権下では非合法な手段で入国した不法移民が急増。米国税関・国境取締局(CBP)の試算では、なんと推定730万人。当然、就労ビザを持っていないので働き口があっても低賃金だが、それはまだマシなほうで仕事が得られない者も多いという。
「不法移民の数を考えれば、いつホームレスに転落してもおかしくない人が非常に多いということ。現に大都市ではホームレスの増加に比例する形で治安が悪化しており、米国民の間で不満が高まっています」(同)
すでにトランプ氏は、側近のスティーブン・ミラー氏を要職に起用する方針だと米国メディアが報じているが、彼は移民問題について強硬派で知られる人物。公約に掲げていた不法移民の強制送還を推し進めると見られている。
ただし、自国民のホームレスに支援の手を差し伸べるかといえば、これについても懐疑的な見方が広がっている。事実、米国籍を有するホームレスにも薬物中毒やアルコール依存症の者が多く、8月には「ホームレスを一網打尽にして収容所で治療を受けさせる」と強気な姿勢で臨むことを示唆している。
「トランプ氏は前回の大統領任期中、低所得層への給付を大幅にカットし、法人税の減税分の財源に充てた“前科”があります。ホームレスが自国民でも手厚い支援を行うとは思えません」(同)
米国では日本以上に自己責任が求められる。ホームレスにとってはバイデン政権以上に厳しい状況に迫られることになりそうだ。