藤井フィーバーで「将棋動画」続々削除!将棋連盟の“一手”に抱く違和感

 藤井聡太七段が「現役最強」と謳われる渡辺明棋聖を破り、史上最年少のタイトル獲得に沸く将棋界だが、にわかはともかく古くからの将棋ファンの中にはある違和感がないこともない。違和感は、昨年9月13日に日本将棋連盟が出したリリースの「棋譜利用に関するお願い」に端を発する。

 そこにはこうある。

「公益財団法人日本将棋連盟と各社が主催する棋戦で作られる棋譜は両者の共通の財産であり、棋譜の無断使用は両者の財産を損なう恐れがあります」

 よって商業目的などで棋譜(図面を含む)を利用する際には、申請が必要で、連盟とスポンサーの許可がいるというのだ。

 世の中は小学生のなりたい職業のトップにユーチューバーが選ばれる時代。もちろん、YouTubeなどの動画配信サービスには将棋ファンによる対局の鑑賞・解説サイトが溢れている。だが従って、現在はこれらのチャンネルでは原則として棋戦の棋譜は扱ってはいけないことになっている。使用の許可を求めれば使えるわけだが、許可が得られるか否かはまた別問題。現実的には、即日で許可が得られる可能性はゼロだ。よってタイトル戦の模様をタイムリーに楽しむには、連盟の公式サイトかスポンサーサイト、これを伝えるマスコミに頼るしかなく、いわばまとめサイト的なものにあたることは出来なくなっている。

 ちなみに、タイトル戦の中でも別格として扱われる竜王と名人戦は、竜王戦が読売新聞社・主催、野村ホールディングス・特別協賛、東急グループ・協賛で、名人戦は朝日、毎日新聞社・主催、大和証券グループ・協賛。その他6つのタイトル戦はほとんどが新聞・通信社主催で、今回の棋聖戦は産経新聞社・主催、不動産会社のヒューリック・特別協賛だ。棋戦会場が映される度に「ヒューリック」の文字が同時に映るのに気を留めた人も多いはずだ。

 つまり、連盟が棋譜の著作権を主張し始めたことで、これら当事者による棋譜の囲い込みが行われたことになる。だから古くからの将棋ファンとしては、ネットでみんなが集まって一流棋士が繰り出す一手一手にあれやこれやと感想を述べあうような将棋談義が行えなくなったことへの違和感を覚えてしまうのだ。

「とはいえ、連盟のリリースに『お願い』とあるように、昨年9月13日の“お達し”をもって動画配信サービスの停止が迫られるというようなことはありませんでした。放置されていたんです。ところが、藤井七段が棋聖戦やこれと同時に挑んでいる王位戦に臨んで史上最年少タイトルホルダーの誕生が近づいた7月頃から動画が削除されるようになったんです。どうやらスポンサー側の削除要請があった模様です」(週刊誌記者)

 棋譜の使えない将棋動画チャンネルなど正直ほとんど意味はない。“お願い”以後は棋譜の扱いには注意してきた老舗動画チャンネルでは、そのあたりの懸念を正式に表明しているものもある。

 棋譜の使用が著作権の侵害に当たるか否かの法律論はさておき、なんとも窮屈さを感じえない。

(猫間滋)

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