渡辺明はなぜ藤井聡太に勝てないのか!?【3】大阪の第2局は叩き合いの熱戦

 渡辺三冠がタイトル戦での藤井竜王に勝利したのは、20年の棋聖戦第3局のみ。やはり苦手意識が拭えないようだ。

「対戦成績2勝9敗という星の差よりも、タイトル戦を2回とも落としている意識のほうが強いのではないでしょうか。自分の持つ王将を奪われれば、今度は5冠と2冠の差になってしまう。それでもタイトル保持者として、今後も藤井竜王と戦うことになるので、なんらかの策を練っているはずです」(屋敷九段)

 第2局の舞台は、大阪・高槻へ移動する。

「今度は渡辺王将の先手番と変わるので、戦術面での主導権を握りやすくなります。ですので、次でディープラーニング系ソフトの効果が出てくるかが注目ポイント。とはいえ、渡辺王将は相手が得意とする戦型から逃げるようなことはしない。第1局でも藤井竜王の相掛かりを正面から受け止めていました。奇策に出ることは考えられない。第2局で勝てばおもしろいが、逆に負けるととても厳しくなります」(松本氏)

 果たして渡辺王将も、昨年の叡王、竜王とタイトルを剥ぎ取られた豊島将之九段(31)と同じ運命をたどることになるのか。

「現時点で藤井竜王と互角に戦えるのは、豊島さんと渡辺さんなど、数えるほどしかいません。第1局は一時、終盤戦に向かっていったものの、途中から局面が収まって中盤になった。これは実力が拮抗していないとできない芸当ですので、見ていて非常に感心しました。さらに最後の1分将棋は相撲で言えば、土俵の上で逃げずにバチンバチンと音を立てて張り手を応酬する重量級の戦いに思えました。この王将戦シリーズは将棋界でも最先端の戦いになります。【8六歩】のような珍しい手や新しい構想がたくさん見られそうな気がします」(深浦九段)

 次なる対局を心待ちにするのは屋敷九段も同様である。

「第1局でねじり合いの激戦を落とした渡辺王将には痛かったが、第2局は先手番となり、主導権を握ることができます。渡辺王将は第1局のような玉が露出した戦いより、玉周りを固めながら戦う形が得意ですので、おそらく居飛車の矢倉系統での戦いを選択すると思います。それに対し、藤井竜王がどのような対応を見せるのか。第2局も最後はお互いの時間を使って叩き合いの大熱戦となるのは間違いありません」

 1月22日からの第2局、決め手となるのは渡辺王将のカウンターパンチか、それとも藤井竜王の想定外の奇襲がまたもや炸裂するのか。初手から盤面に釘づけである。

〈渡辺明王将vs藤井聡太竜王 対戦成績〉

2019年2月16日 第12回朝日杯 決勝  勝:藤井(128手)

2020年6月8日  第91期棋聖戦 第1局 勝:藤井(157手)

2020年6月28日 第91期棋聖戦 第2局 勝:藤井(90手)

2020年7月9日  第91期棋聖戦 第3局 勝:渡辺(142手)

2020年7月16日 第91期棋聖戦 第4局 勝:藤井(110手)

2021年2月11日 第14回朝日杯 準決勝 勝:藤井(138手)

2021年6月6日  第92期棋聖戦 第1局 勝:藤井(90手)

2021年6月18日 第92期棋聖戦 第2局 勝:藤井(171手)

2021年7月3日  第92期棋聖戦 第3局 勝:藤井(100手)

2021年9月14日 第29期銀河戦 準決勝 勝:渡辺(106手)

2022年1月10日 第71期王将戦 第1局 勝:藤井(139手)

*「週刊アサヒ芸能」1月27日号より

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