戦後初「夏の甲子園」中止で地元・西宮市民から「安堵の声」のナゼ

 8月10日に開幕予定だった第102回全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)は新型コロナウイルスの影響を受け、開催中止が濃厚となった。8月20日に日本高野連はオンラインで運営委員会を開いて、開催について協議を行うが、一部スポーツ紙の報道によれば「戦後初となる中止」が有力視されている。

 この事態にネット上では《3年目の夏を迎える高校球児が不憫でならない》《すでにプロのスカウトが注目している選手はいいけど、地方の選手はアピールする場がなくなってかわいそう》と高校球児たちへの同情の声が寄せられている。その一方で、《無念な思いは野球だけじゃない。高校総体はすでに中止が決定しているので他の競技でがんばってきた高校生にも何か救済策を考えないと…》《何より高校球児の健康や安全面を最優先すべき。中止は仕方ない》といった声も聞かれた。

 いずれにしても、多くの日本人が楽しみにしていた夏の風物詩・甲子園の開催の是非が問われるとは、改めてコロナ禍の大きさを実感せずにはいられない。

 だが、開催地である西宮市の甲子園球場周辺からは、「安堵」の声が漏れているという。

「高校球児のみなさんには申し訳ないけど…」と、来場者のマナーの悪さを指摘するのは、甲子園球場の近隣住民だ。続けて、その“実害”を明かすには、「高校野球は一部の特別席を除き、当日券での発売なので、開催日にはチケットを求める長蛇の列ができます。人気カードやお盆には夜中にもかかわらず甲子園球場の敷地外にまで列ができるのが通例で、新聞はよく『徹夜組も出た』と人気のバロメータみたいに書きますが、じつは球場の敷地のすぐ隣が住宅地になっていることを知らない人は多いのではないでしょうか?」

 実際、ツイッター上では昨年8月、《コミケが徹夜禁止なのに、会場と住宅との距離がもっと近い甲子園が徹夜OKな意味がわからん》《甲子園の徹夜組。ゴミ放置するから匂いがたまらん》《いちおう、徹夜禁止の貼り紙はあるけど注意する人間なし》などと、近隣住民と思われる人たちの苦情コメントが寄せられていた。

「甲子園球場は『駐車場はありません』と公にはアピールしていますが、実は球場から南に少し外れた場所に小規模ですが、観客用の臨時の駐車場があるんです。そこは24時間開いてるわけではないので、人気のある高校の試合の時には開場待ちの車が夜中に路上駐車の列を作るんです。真夏の熱帯夜には当然、冷房を効かせるためにエンジンをかけ続けることになり、このエンジン音がうるさくて眠れないこともあるそうです」(別の近隣住民)

 また、甲子園の“名物”ともいえるブラスバンドの応援についても、一部からクレームをつける動きも見られたという。

「2019年の春の大会では、ある高校の大音量の応援が“すごい”と評判になりました。球場から2キロほど離れたところでも、応援の音が聞こえるほどだったそうです。そのあまりに大きな音に、主催者にクレームを入れる近隣住民の方もおり、報告を受けた学校の応援団は楽器の数を減らすなどの対応を取ることになりました」(高校野球関係者)

 一昨年に第100回目を迎えた夏の甲子園。この聖地で繰り広げられる“熱戦”が、近隣住民からも支持されるように運営するのが主催者である朝日新聞社と高野連の責任ではないか。今回、意外なところから安堵の声が聞かれたのは、主催者サイドが何の対策も取らずに放置し続けてきた証拠と言えるかもしれない。

(浜野ふみ)

スポーツ