トレードマークは白ブリーフ!?  しくじり裁判官が「検察庁法改正論争」に参戦

 小泉今日子、浅野忠信、井浦新ら多くの芸能人が多数反対の声を上げたこともあって意外なほどの盛り上がりを見せている検察庁法改正問題。かつて元首相の田中角栄が逮捕されたロッキード事件の捜査に当たった松尾邦弘・元検事総長ら、歴代の法務・検察トップまでもが異例の意見書を提出して反対を表明する中、あの“お騒がせ裁判官”も反対の列に加わっている。5月13日放送のKBS京都のラジオ番組に電話出演した仙台高等裁判所の岡口基一裁判官が、この問題で45分間にわたって持論を展開、「まともな法治国家とはいえない」と、政府を批判したのだ。

 三権独立の原則上、裁判官は政治的な発言を控えるものだが、この裁判官はちと違う。著作やSNSで積極的に情報発信を行っている上、この人の場合はやり過ぎというか、ツイッターで白いブリーフ姿で登場して怒られたり、SNSで実際の裁判案件で不用意な発言をして戒告、懲戒を申し立てられたりと、歯に衣着せぬ言動で裁判官の枠を飛び越えてしまう“しくじり裁判官”なのだ。

 とはいえそこはやはり裁判官、法理に通じた人なので批判理由もしっかりしている。「裁判官が積極的に政治運動に参加することは許されていないが、法案の問題点を説明することは禁じられていない」と、明確に自分の立場をわきまえた上で、「検察官が内閣の顔色をうかがいながら仕事をするようになると危惧される。法解釈の変更を口頭の決済で済ませるなど」ということは「法治国家とはいえない」としているのだ。

 岡口裁判官が話題になったのは2018年頃。この時、「週刊文春」の取材を受け、「なぜ黒ブリーフでなく白ブリーフだったのか」の問いに対し、「ハリウッドザコシショウにインスパイアされて。黒はすでにザコシショウに履かれているから」と回答するお茶目ぶり。法案審議では、委員会参加議員がワニの動画を見ていたり小説を読んでいたりの怠慢ぶりも報道されて話題になったが、岡口裁判官もこれにもお怒りのようで、先週末にはお得意のSNSでこれら報道を引用した上、「ダメだこりゃ・・こんな人が、来週、賛成票を投じるわけです(笑)」と投稿していた。

 5月18日には「今国会での見送り」が大きく報じられたが、永田町のうさん臭さと霞が関のお堅い原則とは一線を画した“しくじり裁判官”のような発言こそが一般の感覚に近くて相応しいようだ。

(猫間滋)

ライフ