新型コロナウイルスの完全終息に向けていまだ外出自粛や禁止が続くなか、世界各地の街中で野生動物などの出没が相次いでいる。
スペインのバルセロナではイノシシが街中を徘徊、米サンフランシスコでも人影のないゴールデン・ゲート・ブリッジ周辺をコヨーテがうろつく。また、イギリスのウェールズでは、約120頭のヒマラヤヤギが街を闊歩、民家の敷地に侵入し我が物顔で垣根や花などを食い荒らした、と現地メディアが報じ、ゴーストタウンならぬゴート(ヤギ)タウン化した街並みの映像に、SNS上では、《街がヤギたちに仕切られた!》《でも、人間以上にきちんとソーシャルディスタンスをとっている》といった驚きのコメントが並んだ。
4月に入り、日本各地でも野生動物の目撃情報が続々と寄せられるようになったが、
「4月中旬には札幌市内でヒグマの出没情報が相次ぎ、5月13日には山形市平清水でもクマが出没したような痕跡が見つかりました。さらに、15日には岐阜県各務原市でカモシカが出没、同日には兵庫県三田市役所にも野生ザルの目撃情報などが相次いで報告されています」(全国紙記者)
動物の生態に詳しい専門家によれば、「本来、4月は山にも豊富な食糧があるはずなのですが、一度、生ごみや残飯などの“エサ”の味を覚えた野生動物はその味が忘れられなくなり、人里へ下りてくる可能性がある。ただ、交通量が多くて広い道路、たとえば自動車専用道を野生動物が渡るのは難しく、それが野生動物の侵入を防いでいたんです。ところが、今は外出の自粛で交通量が大幅に減っている。つまり、野生動物にとって道路が障壁の役目を果たしていない」という。
さらには繁華街への人出が激減する中、住宅街ではネズミの目撃談も急増している。
「多くの飲食店が休業し、地下鉄の乗客が激減したことで、ネズミは食料を求めて生活圏を移すしかなく、残飯の出そうな住宅の近くに集まってくるようになったんです」(前出・専門家)
自然界のバランスにも影響を与えつつある新型コロナウイルスの脅威。しかも、問題はそれだけにとどまらない、というのは前出の専門家だ。
「アフリカでは巨大なエコツーリズム業界が、保護活動に資金を提供しているのですが、新型コロナウイルスの影響で多くの保護団体の活動が休止、あるいは閉鎖状態に追い込まれています。本来、密猟者から動物たちを守る警備員の給料も支払えなくなり、環境保護やパトロールできる人間がいなくなれば、密猟者が増えることは必至です。そして餌を求め、新たな生息地を求める動物たちの大移動が始まることで、以前より攻撃的になる動物も少なくないはず。クマと人間がかつてないような“至近距離”で暮らす可能性が高まっているとも言えます」
街中を集団で闊歩するクマの姿は想像したくないが、映画「ジュマンジ」のように、動物たちの暴走が始まらないことを願いたい。
(灯倫太郎)