行き場のない野菜の「ドライブスルー販売」が“コロナ後”も支持されるワケ

 学校が休校となり、飲食店が軒並み自粛営業を強いられはじめた3月、本来、給食や飲食店で使われるはずだった牛乳や野菜、鮮魚などが行き場を失い、破棄されるしかない……という報道に触れ、大半の消費者は「もったいない」、「買えるものなら買いたい」と思ったはず。

 そんな消費者ニーズにいち早く動いて見せたのが、外食産業向けに青果の卸業を営む「フードサプライ」だ。2020年4月9日には「ドライブスルー八百屋」を同社の東京と千葉の物流センターで開業。それから約2カ月で全国22拠点まで急展開している。

 新型コロナウイルス感染拡大を避けるため、スーパーマーケット各社が分散来店を促している昨今、予約した日時に同社の物流センターに車で来店し、ドライブスルーの要領で、下車することなくスタッフがトランクに野菜を積み込みしてくれる安心安全のサービスが好評だ。

 むろん、消費者のお目当ては「破棄されるかも知れなかった野菜たち」。「もったいない野菜セット」として販売され、十数種類もの新鮮野菜や果物に国産米5kg、さらに玉子も入って5000円。通常より2割程度安い価格設定もありがたい。

《窓からお金を渡したらトランクにダンボールを積んでくれる。30秒もかからずに帰れた》《ちょこちょことスーパーに買い物する必要がなくなった》《季節はずれの福袋感。どんな野菜が入っているかはあらかじめわかっていても段ボールを開ける時のワクワク感がヤミツキになりそう》などと、ネット上ではその斬新な売り方を歓迎する声しきり。

 この「ドライブスルー八百屋」で一躍話題となった同社は、矢継ぎ早に食材の宅配事業にも進出。鮮魚、食肉それぞれの専門卸企業と手を組み、東京都世田谷区限定で「デリバリーマーケット デリマ」の運営を5月10日より開始した。「ミシュランガイド掲載店」に卸すようなこだわりの肉、魚、野菜が自宅にいながらにして入手できるとあって、自粛生活で外食もままならない料理好きにはまさに「待ってました!」のサービスと言えそう。

 コロナ対策では「スピード感」が大事と誰もが理解していながら、遅々とした国会での議論に多くの国民が失望感ばかりを募らせている昨今、短期間で「もったいない野菜」を全国の消費者に流通させた民間企業。消費者の「ワクワク感」もあって、「ドライブスルー八百屋」という購買習慣は“コロナ後”も定着しそうだ。

(浜野ふみ)

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