筆者は年始に参加した“しゃぶしゃぶ会食”がきっかけで「濃厚接触者」に認定され、その後、保健所の手配によって厳戒態勢のドライブスルー形式でPCR検査を受けることとなった。その様子をリポートしたい。
待ち合わせ場所に指定されたのは、駅のロータリーから少し離れた道路沿いだ。指定の時間に行くと、事前に知らされていたワンボックスカーが筆者を待っていた。乗車する前に、ドライバーが私の携帯電話に非通知で電話をかけ、本人確認は済ませていた。マイカーを持つ人は自分の車で検査所に向かうが、そうでない者はこのように、送迎車が用意されるというわけだ。
運転席と後部座席の間はビニールで仕切られており、スキマがないよう目張りされている。コロナ禍が発生して以降、首都圏でタクシーに乗ると感染症対策でビニールの仕切りが設置されている光景をよく目にするが、これをさらに抜け目なく施したという印象だ。
乗車から5分ほどで指定の検査所に着いた。順番待ちの車が2台前におり、15分ほど待った頃、私の乗車する車が列の先頭になる。
ここで検査前に職員から事前に説明を受けた。窓ガラスは閉めたままである。「写真撮影禁止」「窓の開閉は指示があってから」などの注意事項が大きく印刷されたA4サイズの紙がボードに貼られており、一通り説明があった後、マイナンバーカードを窓ガラスに密着させて職員に確認してもらう。それから待つこと3分ほどでいよいよ検査である。
車が進んだところにいたのは、テレビでよく見る白い防護服を着た職員が2名、私服の職員が3名。計5名体制だ。職員の指示を受けて、ドライバーが私の乗車する席の窓ガラスを開ける。この際、マスクを着用したまま前を向いて話すよう指示があった。
運転席の方を見ながら、名前や基礎疾患の有無、通院歴、常飲している薬の有無、直近の体温などの質問に答えていく。そしていよいよPCR検査だが、これも正面を見ながら受けるよう指示があった。鼻だけをマスクから露出させると、職員は真横から私の鼻に検査用の棒を挿入していく。思わずうめき声と涙が反射的に出てしまう。数年前にインフルエンザの検査でも鼻に棒を入れる検査を受けたことがあるが、それよりもさらに奥深くまで棒が侵入してきた。
粘膜の採取が終わると、厚生労働省からリリースされている【ご家族に新型コロナウイルス感染が疑われる場合 家庭内でご注意いただきたいこと〜8つのポイント〜】と印刷された紙を渡され、窓ガラスが閉まるとともに車が発進した。防護服が筆者の目に入ってからここまで、3分程度だろうか。非常にスピーディーな印象を受けた。
検査の翌日、保健所から検査結果の電話連絡があった。結果は陰性。濃厚接触の翌日から数えて2週間となる16日までは、引き続き自宅隔離をお願いしたいとのことだった。ちなみに、陰性の証明書などは原則発行していないという。
1月13日、日本医師会の中川俊男会長が「全国的に医療崩壊は既に進行している」と警鐘を鳴らした。医療現場の疲弊、逼迫した状況がクローズアップされて久しいが、そんな中にありながら濃厚接触者に認定され、陰性ではあったものの保健所の職員の方々に負担をかけたと思うと申し訳のない気持ちでいっぱいである。緊急事態宣言の再発出による効果が表れ、一刻も早く、医療に携わる方々の負担が減ることを願いたい。
(穂波章)