カジノ関係者ならずともわずかでもカジノの世界に知識がある者なら誰もが驚くニュースが伝えられた。シンガポールの象徴的観光名所で、あの天空のプール付きホテルでお馴染みのマリーナ・ベイ・サンズを運営し、世界で数社あるカジノ・メジャーの中でもトップ企業のラスベガス・サンズが日本のカジノ参入から撤退を表明したと13日に伝えられたのだ。
「コロナ禍で世界中のカジノが苦境に陥っているという事情が背後にあるのでしょうが、それならなおさらカジノがほぼ未踏の地である東アジアでの日本のマーケットという伸びしろは是非とも押さえておきたいところ。もちろんサンズも日本の参入には積極的で、横浜がカジノの誘致を打ち出した裏には、サンズのCEO(最高経営責任者)であるシェルドン・G・アデルソンがトランプの大口スポンサーなため、安倍首相を通じてゴリ押ししたという話も流れたほどです」(カジノに詳しいジャーナリスト)
報道によれば、サンズ撤退の理由として、日本のカジノ設置の条件が巨額投資には見合わないということを挙げている。日本のカジノライセンスは10年間を期限に与えられることになっているが、何しろ大規模開発なので建設におよそ5年はかかる。残りの5年ほどでペイするというには、いかにカジノの収益性が高いといっても確かに無理筋な話でもある。銀行が融資を渋ったとの情報も伝わっており、コロナで企業体力が疲弊する中、日本のカジノ参入は“旨み”が低いだけでなく“火傷”のリスクが高いと考えてもおかしくはない。
さて、日本国内で正式にカジノ誘致に動いているのは横浜市、大阪府、和歌山県、長崎県で、当初は3カ所でその後、状況を見ながら数を増やすというのが大まかな方針。だから最初の3カ所は地方よりも都市部で大規模なものになるというのが通説なので、横浜と大阪が正式決定される公算が高い。一方、大阪は既にカジノ・メジャーのMGMリゾーツとオリックスの共同チームで業者選定が落ち着いているので、横浜での参入に積極的だったサンズが撤退したことで、入札競争はその様相が大きく変わることになる。
「その横浜には大手のギャラクシー・エンターテインメントやメルコリゾーツ&エンターテインメント、ウィン・リゾーツなどが有力視されていますが、日本の遊技機の雄のセガサミーも参入を表明しています。最大の対抗馬であるサンズがいなくなったことで、セガサミーによる和製カジノの実現性では一歩前進したことになりますね」(前出・ジャーナリスト)
そもそもコロナ禍で日本のカジノ設置は当初のスケジュールが後ろ倒しになり、熱気に大きな冷や水を浴びせかけたが、ここへきてのさらなる追い打ちで大きな拍子抜け感は否めない。
(猫間滋)