5月8日に自民・公明ら与党は、衆院内閣委員会で「検察庁法改正案」を野党欠席のまま審議入りさせた。この普段なら“地味〜”で誰も見向きもしない法律改正案が一躍、ツイッターのトレンドワードの上位に上がった。キョンキョンこと小泉今日子や数多くの芸能人・芸能関係者らがこぞって反対のツイートをしたからだ。
小泉は9日深夜に自身が代表を務める事務所のツイートを更新、「#検察庁法改正案に抗議します」とのハッシュタグのついたツイートを、「もう一度言っておきます!」と連投。同ハッシュタグのツイートが100万を超えたところでさらに「1.000.000超えました。この目に焼き付けました」とつぶやいて、10日朝にもまたツイートを行った。このほか芸能人・芸能関係者では、井浦新、宮本亞門、浅野忠信、秋元才加、城田優、高田延彦、そしてきゃりーぱみゅぱみゅなども抗議のツイートを行って、同じハッシュタグをつけた投稿が一時380万以上を超えた。
「いわゆる『黒川問題』ですよね。今度の改正案は検察官の定年を延長するもの。安倍政権では本来ならば2月に定年を迎えているはずの東京高等検察庁トップの黒川弘務・検事長の定年を8月まで延長しています。黒川さんは第2次安倍政権で官房長を異例の5年も務めて、得意の根回しで数々の法案を成立させて官邸の覚えがめでたい。その黒川さんの定年延長を既成事実化して、65歳定年である検察・法務トップの検事総長に、役所では絶対のはずの慣例人事を覆してでもねじ込もうというものです」(全国紙記者)
安倍政権お得意の“お友達人事”がまたも行われようとし、それがコロナ禍のドサクサにまぎれてのことだけに、広く世間の怒りを買っているというわけだ。
と、黒川問題に世間の注目が集まっている中、さらに地味ながらもう一つの“お友達人事”が行われていた。法案の強行審議入りの前日の7日、経済産業省は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の前・最高投資責任者(CIO)の水野弘道氏を参与とする人事を発表、金融関係者などから「またか」の声が上がっているのだ。
「水野さんが3月末をもってGPIFを去ったのは、性的ハラスメント疑惑まで取り沙汰された内紛があったからです。前理事長と女性職員の不適切な関係には、かの“文春砲”まで参入してGPIF内部では上に下にの大騒ぎになったんですが、証拠とされた写真はどうやら加工が施されたもので、内部告発で浮上したハラスメント疑惑はこの女性職員自身が否定。謀略の深さだけが際立つ騒動でしたが、背後事情として、前理事長と水野さんの対立があったとされました」(金融ジャーナリスト)
そもそも水野のCIO就任は「分不相応」との声があった。160兆円にものぼる日本の年金を運用するGPIFは当然のごとく政府系金融機関出身のキラ星のエリートがトップを占めるものだが、水野は民間出身で、ファンド運用者としてはプライベート・エクイティ(未公開株)でせいぜいが数千億円程度。前理事長との確執が生まれた所以でもある。
「水野さんをCIOにねじ込んだのは世耕弘成・経済産業大臣(当時)です。世耕さんの後押しもあって、政府の政策ブレーンと呼ばれる人たちとの人脈に長けています。あんな犬も食わぬ内紛でミソを付けた人が今度は参与ですからね。まさに情実人事ですね」(前出・金融ジャーナリスト)
奥さんのコロナ禍の下での大分旅行に始まり、「うちで踊ろう」動画、未だ届かないアベノマスク、そして“お友達人事”と、問題ありの安倍政権で出たばかりの内閣支持率は横ばいだそうだ。危機の時は政権支持率が上がるのが政治学の常識だそうだが、そうならない明確な事情があるということか。
(猫間滋)