「キングオブコント」優勝者の“その後”はさまざまだ。東京03のように、単独ライブのチケットがプラチナ化するほどステータスを上げたトリオがいれば、ロバートやバイきんぐ、かまいたちのようにテレビタレントとして引く手あまたになる例もある。
その一方で表舞台から姿を消してしまったコンビもいる。初代覇者のバッファロー吾郎や第9代キングのライスは、主軸をお笑いから舞台にした。第3代キングのキングオブコメディは、高橋健一の不祥事によって解散した。
そんななか、2013年度覇者のかもめんたるは異質だ。ネタを書いている岩崎う大が作・演出を手掛け、「劇団かもめんたる」を旗揚げ。観客動員を順調に伸ばしているのだ。昨年11月から12月にかけて上演した舞台「GOOD PETS FOR THE GOD」は、新人劇作家の登竜門とされる「第64回岸田國士戯曲賞」の最終候補に残った。残念ながら受賞はならなかったが、快挙であることは間違いない。
相方の槙尾ユウスケは同劇団の座員の一人に過ぎず、コンビ間で大きな格差が生じているのは否めない。舞台はギャラが発生しない稽古に時間を拘束され、当然、生活は厳しくなる。そのため、昨年から下積み時代さながらに再びアルバイトに精を出しているという。問題は、その内容だ。
「昨年6月、東京・三軒茶屋で芸人バーと銘打つ店『PUNCH LINE』がオープンしました。吉本興業の元コンビ芸人『デスペラード』の武井志門が店長とあって、日替わりでいろんな芸人がバイトしているのです。槙尾はサービス精神旺盛なので、出勤日はコントで始めた女装姿で接客。服、ウィッグ、メイク…すべてが完ぺきなので、人気の“女性キャスト”になっているそう」(芸能ライター)
朝の5時まで営業しているため、芸人はライブ出演後に出勤できる。さまざまなジャンルの芸風がそろうなか、槙尾は唯一の女装キャラだ。
女装は、完全無欠といっても言い過ぎではないほど美しい。コントで始めた20代の頃は、カツラをかぶる程度だった。30代になるとリアルを希求し、どんどん没頭。カツラ、メイク、衣装は女性用。メイクの資格を取得し、女装イベントを開催。コミュニティも作って、女装趣味の友だちが多くできた。
「槙尾には、稼がなければいけない理由があります。優勝した翌14年、第1子となる長男が誕生していて、小学生の今はお金が必要。相方が劇団に没頭して、時間をガッツリ割かれているので、隙間の時間でバイトをしなければいけない苦しい台所事情です」(前出・芸能ライター)
コントの頂点に立っても、芸人1本で食うことは困難。妻が“ガールズバー”に出勤するダンナに理解を示しているのが、唯一の救いかもしれない。
(北村ともこ)