ひょっとしたら、開幕ローテーション入りもあるかもしれない。東京ヤクルトスワローズのドライチルーキー・奥川恭伸投手が”前例”をブチ破る可能性が出てきた。
「ヤクルトは先発ローテーションに若干の不安を抱えています。小川、原、新加入のイノーアまでは計算が立ちますが、4番手以降は40歳で開幕を迎える石川、あとは、山田、高梨、清水、高橋といったところが争うことになるでしょう」(スポーツ紙記者)
そこで浮上してきたのが、奥川だ。甲子園で見せた快速球を思うと、将来のためにローテーション入りさせるのも悪くないだろう。
「19年ドラフト会議で同じく注目を集めた佐々木朗希(千葉ロッテ)の影響もあります。彼は将来性を重視し、大事に育てられ、指名したロッテも24時間態勢でのメディアケアを約束しています。野球ファンは、高卒投手は育成重視という雰囲気になっています」(アマチュア野球担当記者)
ヤクルトには高卒投手用の育成マニュアルがある。2017年以降、ケガ防止のため「実戦投球は3月第4週以降」と決めており、キャンプ中の練習メニューにしても、高野連もびっくりするくらいの少ない球数制限を定めているという。
しかし、奥川と佐々木は全く違う。炎天下の甲子園でもスピードダウンしなかった快速球はもちろんだが、体も丈夫で、体力面では佐々木の比ではない。また、下半身が強い。筆者も星稜高校の練習を取材したが、ランニング中の後ろ姿を見ていると、飛び跳ねながら走っているようなバネがあった。「松坂大輔、田中将大のように1年目から投げられるのではないか?」と思う取材陣は少なくない。高津臣吾新監督を始め、ヤクルトのコーチングスタッフも迷っているそうだ。
「ヤクルトが高卒投手の育成に慎重なのは分かります。でも、その球数制限まで設けたマニュアルが作られた17年以降、ヤクルトは1位指名で消える高校生投手を獲っていません。育成で指名した近年の高校生投手と奥川では素材が違いますよ」(球界関係者)
高津監督が最終的な判断を下すことになりそうだが、ヤクルトは奥川専用の高卒育成マニュアルの作成に迫られるだろう。
(スポーツライター・飯山満)