大枚を払い店に通い詰めたのに邪険され、ついカッとなって…。古今東西、水商売の世界では女性従業員と客とによるこの手のトラブルがよく起こる。ただ、そんな中で発生する最悪な事態が恨みによる殺人事件だ。7月6日未明、静岡県浜松市で起こったガールズバーでの殺人事件も、客として通っていたそんな男の身勝手な犯行だった。
殺害されたのは、26歳の女性従業員と27歳の女性店長。殺人容疑で逮捕されたのは、女性従業員に一方的な好意を抱いていた41歳の常連客だった。
「容疑者の男は女性従業員目当てで店に通うようになったようです。一方、殺害された従業員はたいへん明るい性格で接客にも長け、常に周囲を楽しませる存在だったとのこと」(社会部記者)
実はここ数年、ガールズバーを巡る男女間のトラブルが目立って増えている。
「昨年5月に新宿区のタワマンで、52歳の男に殺害されたのも、東京・新宿で、ガールズバーを経営する当時25歳の女性でした。男は裁判で『女性から自分の夢のために人生をかけてくれたら結婚すると言われ、1600万円を渡した。しかしライブ配信で悪口を言われ腹が立ち、金を返してもらいに現場に向かい、話し合いの最中、人が集まってパニックになって刺した』などと供述しています」(同)
昨年10月にも東京・新橋のガールズバー店内で、18歳の女性従業員が49歳の男にナイフで首を切られ死亡する事件が発生。容疑者の男は群馬県渋川市在住で、殺人未遂の現行犯で逮捕されたが、2人の間には金銭トラブルがあり、男は犯行前夜の午後11時ごろに来店。女性スタッフが接客し、早朝5時過ぎに犯行に及んだとされている。
いずれの事件も、犯行に及んだのは52歳と49歳という「アラフィフ」独身男。浜松市で起こったガールズバー殺人の容疑者は2人に比べ若干年下だが、3人とも犯行に刃物を使用していることから、強い憎悪があったことは想像に難しくない。ガールズバーを舞台に、なぜこのような事態が起こるのか。風俗事情に詳しいライターが説明する。
「かつて、夜の世界での男女間トラブルと言えば、その多くがホストやキャバクラと相場が決まっていました。ところが、コロナ禍以降、素人キャバ嬢が減り、プロ意識の高さを売りにする店が増えた。つまり、キャバクラでもちょっとした高級クラブ感覚を味わえるようになった。ただ、そうなると素人キャストは敷居が高くなり、結果、素人キャバ嬢たちがガールズバーへと流れるようになったというわけなんです」
接待が仕事となるキャバ嬢と違い、ガールズバーはあくまでも「バーテンダーが女性中心のバー」。そのため、キャストらも酒類や料理を提供するが、接客はカウンター越しが原則なため、話を合わせる程度の女性もいれば、逆に親身になって話を聞いてくれるキャストもいるなどまちまち。低料金でキャバクラ並み、いやそれ以上の親近感が得られるとして、ドはまりする中高年が急増しているという。
「キャバクラは指名するために追加料金が必要になりますが、ガールズバーは時間を延長すれば、基本は指名料も必要もない。しかも、キャバクラに比べ低料金なため通いやすく、常連は『ガチ恋』はハマりやすいんです。とはいえ、女性キャストは素人が多いため、トラブルになりかけても客のあしらい方がわからず、結果、常連客をその気にさせてしまい、後戻りできない状況を作り出してしまうようなんです」(同)
普通に考えれば20代女性が40~50代男性に本気で恋心を寄せるなど、そうそうある話ではないはず。だが、その正常な感覚を麻痺させてしまうのがやはりアルコールの力なのか。これ以上、悲惨な勘違い事件が起こらないことを願うばかりだ。
(灯倫太郎)
※写真はイメージ