アーケード街を歩くと、そこかしこから客引きの声が聞こえてくる。中国人居酒屋の前で一瞬でも足を止めると、すぐに店内から女の子が飛び出て、「いらっしゃいませ〜」と手招きして熱心に勧誘するのだ。
記者が入ったのは、飛田本通りにある店だった。客の入りは上々で、カウンター席では4人の日本人客がカラオケを楽しんでいる。記者もカウンター席に座ると、若かりし頃の渡辺めぐみに似た細身の女の子が中国なまりで、
「サキでーす」
と笑顔で注文を取りに来た。さながら中国版ガールズバーだ。
その隣には志田未来似の中国人女性がいて、
「福建省から来たのよ」
と自己紹介。2人とも見た目のレベルはかなり高い。還暦近いオヤジ客がサキ小姐に年齢を聞くと、
「19歳でーす」
と言いながら、客におごらせたワインに口をつける。
「じゃ、酒飲んだらアカンやん」
別の客が突っ込むと、
「今日が20歳の誕生日なの(笑)」
中国人女性はすっかり大阪の街に溶け込んでいるようだった。ちなみに、どちらの女性店員も推定25歳といったところか。
ごまかしているのは、年齢だけでなかった。70代近いおじいさんが「ふだんは何をしとる?」と聞いてもはぐらかす。見かねた常連客が明かすには、
「このコは日本語学校に行ってるねん。ほぼ毎日、ずっと来てる」
留学生が日本で働けるのは原則的に週28時間以内と入管法で定められている。店の営業時間は午後3時から午後11時。もしもフルタイムで働けば、不法就労(オーバーワーク)で彼女だけでなく雇用主にも厳しいペナルティが科されることになる。
あらためて先ほどの常連客にこの店の魅力を聞くと、
「やっぱり安いからねぇ。そうそう、ここは観光ビザで働いているコも多いんやで」
カラオケは1曲100円。飲み物もつまみも300円台からあり、値段はリーズナブル。たいていの客は飲んで歌って2000円前後で会計を済ませていたが、女の子から「飲むの競争よ」と、さんざんおごらされていた客は6000円を支払っていた。
「中国人はしたたかやで。『こいつは太い』と思ったら盛んにたかりよる。実際、あのお姉ちゃんたちが競争とか言って飲んでるのが、酒かどうかはわからんよ」(常連客)
これでは「ボッタクリ」と敬遠されてもしかたない。取材をしたのは月末。客の入りもよさそうに見えたが、店員のサキによれば、
「今日は暇ね。でも、毎月1日になると、とても忙しいよ」
月の初めといえば、大阪市西成区の生活保護の支給日だ。同区では4人に1人が受給者と言われ、その界隈では毎月1日は「給料日」と呼ばれている。
「生活保護費の額は年齢によっても異なってきますが、生活扶助が約8万円、住宅扶助が約4万円で、計12万円が現金で支給されます。また、医療費が全額公費負担になるなど、さまざまな恩恵を受けられます」(長田氏)
国の税金までもが、結果的に中国系の悪質店に流れていることになる。