東京への一極集中を避けようと、移住に加えて国が推奨しているのが二拠点生活。その一環として、24年10月に「全国二地域居住促進官民連携プラットフォーム」を設立。同11月には、二地域居住者向けの住居や仕事、地域交流の環境整備などに関する「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律」を施行し、国や自治体も支援を行っている。
記者も埼玉と札幌に自宅があり、行き来する生活を始めてから5年。同じように二拠点生活や多拠点生活を送る方たちからも話を聞く機会もあり、デメリットに関する認識はほぼ共通していることが分かった。
まず挙げられるのが、何といっても支出額の増加。自宅が増えるので住宅にかかる費用は当然2棟分となる。さらに光熱費も2棟分のため、現役世代もシニア世代もそれなりの収入や資産が必要。「思っていた以上に金がかかった」という声が聞かれ、これに関しては記者も同感。もともと都内の賃貸マンションに住んでいたが、二拠点生活を始めた後、出費を抑えるために家賃の安い埼玉に引っ越したからだ。
しかしメリットとして、食費に関してはもう1つの拠点が地方なら安くなる可能性が高い。総務省「消費者物価地域差指数(令和5年)」によると、食品物価指数は東京102.8ポイントだったのに対し、記者が新たに住み始めた札幌は102.4ポイントと若干低い。
どちらも全国平均(100)よりは高いが、各スーパーなどの店頭価格を比較すると、野菜や米は道内産、魚介類は近海モノが店頭に並ぶ札幌のほうが指数の差以上に安かった。食費は二拠点になっても倍にならないため、拠点先次第だが安くなる余地はあるはずだ。
一方で大きな負担になるのは、拠点間の移動にかかる費用。車で行き来できる距離ならまだいいが、問題は飛行機や新幹線で移動するような遠方の場合だ。記者は年間10往復前後しているが、飛行機は基本的にセール運賃の時にまとめて予約している。
もちろん、仕事の関係で急きょ東京、もしくは札幌に行かなければならないこともあり、そのときは少し遠いが成田発着のLCCを手配。それでも直前の予約だと片道1万円前後かかることも珍しくない。年間だと平均20万円の出費になる。
記者はすべて承知のうえだが、会社員の場合、二拠点生活者でもほとんどの企業は行き来の費用を出してくれない。そのため、会社勤めをしている方は、首都圏と関東郊外、もしくは静岡・山梨・長野・福島など比較的近い地域で二拠点生活をしてケースが多かったが、それでも交通費はばかにならないだろう。
ただし、多くの自治体が実施する移住支援金制度は、条件次第では二拠点生活にも適用される。ぜひ積極的に活用したいところだが、自宅を複数の地域に持つというのはまだハードルが高いのかもしれない。
(高島昌俊)