男性も「産後うつ」になる?父親のメンタル不調が増加する理由

 出産後、子供を抱える母親が「産後うつ」になってしまった、という話をよく耳にする。だが実は近年、男性も「産後うつ」に悩まされるケースが増えているという。

 男性の産後うつは、学術的には「paternal postpartum depression」、つまり「父親の産後うつ」と表現され、国立成育医療研究センターが実施した調査によれば、1歳未満の子どもがいる家族のうち、メンタル面で不調をきたすリスクを抱えた父親は全体の11%。この数字は、母親のそれと同じ割合だったという。

 とはいえ、むろん男性は子供を産むわけではない。そのため、出産前後の女性に見られる直接的なホルモンの影響による体調に変化が現れるのではない。ただ、パートナーが妊娠、出産することで生活が大きく変化し、育児に対する不安や夫婦関係が変化。さらに、仕事と家事・育児を両立させるため、心身の負担が増えることなどが、要因だと考えられている。

 具体的な症状としては、「笑うことがなくなった」「趣味や好きだったことも楽しめなくなった」「何に対してもやる気がでない」「よく眠れなかったり、泣けて来たりする」等々。ひどくなると日常生活もままならない状態になることも少なくないとされる。

 現在、日本の夫婦の約7割が共働きと言われ、国や自治体も母親に対しては各種健診や家庭訪問など、サポートを充実させてきた。一方、父親についても「産後パパ育休」などの施策は進めてはいるものの、まだまだ追いついていない状態。加えて、「男は弱音を吐くべきではない」という「男らしさの押し付け」が社会の風潮として残っていることも事実で、それも「男性の産後うつ」が増加する要因になっている。

 専門機関の聞き取り調査によると、「産後うつ」になりやすい男性は、その多くが真面目で優しく、妻を大切にしたいという思いが強い。つまり、このような父親は、辛いと思っていても「母親の方がもっと辛いのだから自分も頑張らないと」と悩みを抱え込み、自分を追い込んでしまいがち。妻が産後うつになると、男性がうつ状態になる確率は2割~5割上昇するというデータもあるというから驚くばかりだ。

 では、男性が産後うつにならないためには、どんなことに気をつけていればいいのか。それが「備えあれば憂いなし」との言葉通り、事前に相談先やサポートしてくれる人・場所を探しておくこと。つまり、産後、困ってから「探す」のではなく、妻が妊娠した時点でいざという時を考え、家族や親せき、友人など相談できる周囲の環境・体制を整えておくことだ。パートナーと2人だけ、あるいは個人だけとなると、のしかかる負担は大きいが、「チーム」を作っておけば負担も分担できる。そのためには、どんどん行政のサービスなども利用することだ。

 通常、大半の地方自治体には「母親の産後うつ」の相談や支援活動を担当する母子保健に関する窓口があるので、まずは担当者に相談、専門の窓口に繋いでもらうことだ。また、自治体の中には男性の産後うつ相談を受け付けている窓口もあるので、そこで状況を説明し具体的にどのような支援が必要なのかなどを相談、プログラムを立案してもらい、サポートしてもらうという方法もある。

 とにかく、ひどい落ち込みやイラ立ち、疎外感といった症状が現れはじめたら、一人で悩まず自治体の母子保健担当者に相談することだ。そのためにも、「男はこうあるべき」「父親はこうすべき」という固定観念から脱却すること。男性も女性も困ったときはお互い様だ。それが転ばぬ先の杖となることを忘れてはならない。

(健康ライター・浅野祐一)

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