【中国】海底ケーブルの破壊で習近平が狙う“強制的平和統一”

 台湾で頼政権が5月に誕生したが、中国はその直後に台湾を包囲するように大規模な海上軍事演習を行うなど、引き続き台湾へ圧力を加えている。

 中国の習近平主席は台湾統一をノルマに掲げ、そのためには武力行使も辞さない構えで、仮に台湾が独立に向けた動きを具体的に示せば有事の可能性は飛躍的に高まるだろう。現実的可能性として、その軍事的行動はあくまでも最後の手段になろうが、中国は台湾を“無力化”させるための行動を既に取っている。

 たとえば、台湾を無力化させる手段の一つに、通信用海底ケーブルの破壊がある。中国大陸に隣接する台湾離島の馬祖列島では2月、台湾本島と繋がる通信用の海底ケーブル2本が相次いで切断された。馬祖列島と台湾本島を繋ぐ海底ケーブルはこの2本しかなく、要はこれによって馬祖列島は外との連絡が取れなくなり、本当の孤島となってしまうのである。

 幸いにも通信会社が台湾本島からマイクロ波を送信して馬祖列島との通信手段を確保したが、その後もネット回線やスマートフォンで上手く連絡が取れないなどの影響が生じた。台湾政府によると、こういった台湾本島と離島、離島同士を繋ぐ海底ケーブルが切断される事件がここ数年だけでも30件以上報告されており、中国船が意図的に切断しているという。

 台湾は海に囲まれており、諸外国との連絡、情報共有などで海底ケーブルは必需品だ。政府は通信衛星の整備を強化しているが、海底ケーブルが機能しなくなれば情報を入手できなくなった市民の間でパニックが広がることは想像に難くない。しかし、それが中国の狙っていることだ。

 習氏にとっても台湾侵攻は決して簡単な決断ではない。そのため海底ケーブルを破壊し、それによって外部との連絡が困難になった台湾を混乱させ、独立に向けた動きを諦めさせることを狙っている。強制的な手段で平和統一を目論む習氏にとって、海底ケーブルの破壊は極めて重要な手段となろう。

(北島豊)

ライフ