【中国】「台湾有事の前兆」は人民解放軍の集中配置と名目上の軍事演習

 台湾で5月に頼清徳氏が総統に就任したが、中国は頼政権への反発を強めている。頼氏は就任演説で、「中華民国と中華人民共和区は互いに隷従しない」と発言したが、中国はこれを独立に向けた言動と認識し、台湾独立は武力行使によって阻止するとの姿勢に撤している。

 台湾では7月下旬、年に一度の大規模軍事演習「漢光演習」が行われ、頼氏は現場を初めて視察した。今回は中国軍による具体的な侵攻を想定し、実戦能力の向上を目指す訓練が中心で、夜間の訓練も重点的に行われた。頼氏は台湾市民に安心感を与え、台湾を防衛する決意を世界に示したと訓練の意義を強調したが、中国は独立を図る企みは必ず失敗すると牽制した。

 緊張感漂う中台関係だが、台湾には2万人の日本人が駐在し、台湾有事になれば多くの在台邦人は篭城の身になることが予想される。台湾には各地に身を隠せるシェルターが設置されているものの、可能であるなら台湾からの退避を進めたいものだ。

 では、どんな状況になれば台湾から退避するべきなのか。これについては、中国軍による大規模なサイバー攻撃、海上封鎖、ミサイル攻撃などが言われているが、最も重要になるのは、習近平政権が福建省など台湾の対岸側に人民解放軍を集中的に配置した時だろう。一昨年2月のウクライナ侵攻の直前、ロシア軍はウクライナ国境に異常な数の配置を示したが、習政権は大規模な軍事演習という名目で演習を実施するとともに、一気に台湾への侵攻を実行する可能性が高い。

 台湾有事の際、習政権は短期決戦で臨んでくる可能性が高い。実際、初めの軍事衝突から米軍が台湾防衛に関与するまでには一定の時間を要するとみられ、中国軍としては米軍の関与によって目的達成が大きく阻害される可能性があることから、短期決戦で台湾の制圧を考えていることだろう。

 大規模なサイバー攻撃、海上封鎖などが実行されれば、台湾と外国を結ぶ航空機のフライトは一気にストップすることから、異常な数、規模の人民解放軍が台湾周辺に集中的に配置された段階で台湾からの退避を進めることが最もスマートな選択となろう。

(北島豊)

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