内閣府が全職員を対象に、「賃上げを幅広く実現するための政策アイデアコンテスト」を開催。「すべての会社員を個人事業主にする」というアイデアが優勝アイデアに選ばれ、SNS上で物議を醸している。
同コンテストは内閣府が、全職員と他省庁・地方自治体・民間企業からの出向者等を対象に、賃上げを幅広く実現するための政策アイデアを募集したもので、応募36件の中から、アイデアの新規性や詳細度、実現可能性の観点からの評価と、応募者からのプレゼンテーションにより、優勝および優秀アイデアが決定された。
優勝アイデアに選ばれたのは、「物流業界の店着価格制是正による賃上げ促進策について」と「残業から副業へ。すべての会社員を個人事業主にする。」の2点だが、注目を集めているのは後者だ。
このアイデアでは、まず残業を禁止、従業員は定時以降、個人事業主として残業相当分の業務を会社から受託するとし、通常の残業では社会保険料と所得税が引かれるが、業務委託であれば受託金額をまるまる受け取れ、実質5%の賃上げになる、と試算。一方、企業側も、従業員に残業代と社会保険料を支払うよりも、委託費用と消費税を払う方が15%の増益になる、としている。
ところがこのアイデアでは、個人事業主として払うべき税金や社会保険料については触れられておらず、定時後も発注者と労働者との間に指揮命令関係が残るであろうことから「普通に偽装請負スキームだろ」「契約や労務管理がめちゃくちゃ面倒」などとツッコミが殺到している。
「このコンテストは、あくまで自由な発想と斬新性を重視しており、実現性があるかは未知数。社会保険料の節税が目的のようにもみえますが、従業員にしてみれば定時後に委託業務に移行することで、その際にもし自身の身に何かあったら労災保険が下りるのかなど不安な部分もありますね。一部の社労士からは『これを顧客企業に提案しても良いってことかしらね(笑)』などと冗談めかす人も出ています」(マネー誌ライター)
どうやらかなりイジられているようだが、あくまでもこのアイデアは、コンテストで提案されたひとつのプランに過ぎない。提案者もネット上に飛び交っている意見に、いまごろ耳を傾けているのではないだろうか。
(ケン高田)