現在、JR各社が行われている「みどりの窓口」の削減。そんな中、JR東日本の喜勢陽一社長が5月8日の定例会見で「削減方針を凍結する」と“撤回”を示したことが話題となっている。
同社は21年、当時管内の440駅に設置していたみどりの窓口を、25年までに140駅程度と7割削減することを発表していた。撤回の理由としては、繁忙期や多くの学生や通勤客が定期券を購入する春先、窓口のある各駅で大行列ができるほどの混雑に陥った点が挙げられる。実際、駅によっては《何分待ち》のボードが掲げられたり、SNS上にも待ち時間や並んでいる人数が投稿されたこともあった。
4月に通学用定期券を購入するため、八王子駅のみどりの窓口に並んだ高校生のN君も「1時間以上待ちました」と話す。さらに3駅隣の立川駅では最長2時間待ちの日もあったという。
なかにはみどりの窓口でしか買えないきっぷもあり、券売機で購入可能でも高齢者の中に使い方が分からずに窓口に並ぶ人も多い。また、外国人向けのJR共通の乗り放題きっぷ「ジャパンレール・パス」はウェブ上で購入できるが、きっぷの受け取りにはみどりの窓口でパスポートの提示が必要。結果、待ち時間が長すぎて乗りたかった列車に間に合わなかった“被害事例”が続出している。
「今回のJR東日本の削減凍結は英断と評価する声はありますが、現時点で管内のみどりの窓口設置駅は首都圏99駅を含む209駅。すでに半数以下に減っており、当初掲げた目標の77%はクリアしています。そのことも削減凍結を後押ししたのでしょう」(鉄道専門誌編集者)
しかしながら今のところ、削減を撤回したのはJR東日本だけ。グループ他社が追随する可能性はあるのだろうか?
「十分考えられますが、増えることはないと思います。JR側はネット予約を促進したい意向ですが、JR東日本系の『えきねっと』やJR東海系の『スマートEX』、JR西日本系の『e5489』など会社ごとに複数の予約サイトが存在し、操作方法も異なるので使いづらいと評判はイマイチ。そこもみどりの窓口で購入する人が多い原因となっています」(同)
駅にはカメラ越しにオペレーターが対応してくれる「みどりの券売機」も登場しているが、こちらも使いにくさが課題となっている。いずれにしてもすでに窓口自体がかなり減っている以上、年度代わりや繁忙期の大混雑ぶりは今後も避けられそうにない。