大都市圏以外の大半の路線が採算に見合わず、苦しい経営を強いられる鉄道業界。JR東日本は11月24日、1日の利用客数を示す「輸送密度」が昨年度2000人未満だった区間を公表したが、厳しい現実を改めて突きつけられた。
対象となったのは35線66区間で、当然ながら全区間赤字。合計額は679億円に上り、赤字額が大きいのは羽越本線の村上〜鶴岡間の49億9800円。また、100円の運賃収入を得るための必要経費を表す「営業係数」のワースト区間は、陸羽東線の鳴子温泉〜最上で2万31円もかかっていることが判明した。
鉄道利用状況の大都市圏と地方の格差は開く一方で、国土交通省は今年2月、ローカル線の今後について考える「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」を開催。そこで用意された資料には輸送密度について4000人と2000人の2つの線引きが行われている。これが将来の路線廃止の基準のひとつになると指摘する。
「この会議では解決策として、線路などの沿線の保線管理を鉄道会社ではなく自治体などが負担する『上下分離』、バスへの転換などが示されました。その目安となる数字が輸送密度2000人で、JR東日本が今回公表した66区間は廃止予備軍との見方もできます」(鉄道ジャーナリスト)
ちなみに輸送密度の下位10区間は、陸羽東線の鳴子温泉〜最上(44人)、久留里線の久留里〜上総亀山(55人)、花輪線の荒屋新町〜鹿角花輪(58人)、山田線の上米内〜宮古(61人)、飯山線の戸狩野沢温泉〜津南(63人)、北上線のほっとゆだ〜横手(67人)、只見線の只見〜小出(69人)、磐越西線の野沢〜津川(80人)、津軽線の中小国〜三厩(98人)、只見線の会津坂下〜会津川口(124人)となっている。
ただし、輸送密度2000人以下でも奥羽本線や羽越本線、上越線などのように貨物列車の大動脈となっている路線は廃止になる可能性は極めて低いという。
「ここから主要な貨物路線を除外しても約40区間は残ります。うち9区間は輸送密度が100人以下と数字だけで判断すれば、いつ廃止になってもおかしくない状態です」(前出・ジャーナリスト)
国鉄からの分離民営化以来、第三セクター移行を除き、JR東日本管内で廃止となったのは14年春の岩泉線と16年春の北海道新幹線開業に伴い消滅した津軽海峡線だけ。近い将来、北海道のような鉄道の廃止ラッシュが起きなければいいが……。