ところが21日夜に持たれた2人の「事後報告」会談は、意外や意外。麻生氏も「しょうがない」という雰囲気で終わったと伝えられている。本来は大荒れに荒れるはずがその熱がなかったということで、「麻生がついに岸田に愛想をつかした」との観測が永田町に広がった。
当初は「岸田の乱」に見えた動きについて、官邸キャップは別の見方を耳打ちする。
「誰にも相談のない岸田さんの突発的な派閥解散宣言だったのですが、後に、宏池会元会長で、岸田さんの政治の師である古賀誠元幹事長(83)には相談したようで、『岸田総理はすばらしい決断をした』と周囲に話しているとか。その後、森山派、元は宏池会から出た谷垣グループの解散が伝わると、岸田総理の独断の反乱ではなく、古賀さんが知恵をつけた政変だったのではないかとの見方も出てきている。さらに麻生氏を持ち上げ、『ポスト岸田』の禅譲案で手打ちしたとの見方も出ています」
古賀氏と麻生氏と言えば、同じ福岡で長く勢力を争い、政界では知らぬ者はいない犬猿の仲だ。一方、麻生氏は、元は同じ宏池会の流れをくむ麻生派と岸田派の合流で「大宏池会構想」を模索していた。しかし、なかなか実現できないまま岸田政権を縁の下で支えることに。そこに古賀氏の入れ知恵があったとすれば…、麻生氏が怒髪天となってもおかしくはないが、どうにも麻生氏の旗色もよくないというのだ。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は、2人のパワーバランスをこう説明する。
「岸田さんに近い人から聞いたところでは、麻生さんよりも怖いのが茂木派のようです。というのも、ポスト岸田として担ぐ手駒が足りない。唯一『女性初の総理になれる逸材』とほめちぎっていたのが、上川陽子外相(70)ですが、ライバルとなる河野太郎デジタル相(61)や石破茂元幹事長(66)に比べるといかにも弱い。また、多くの派閥が解散して7割が無派閥ですから、政治刷新会議で麻生さんと並んで最高顧問についた菅義偉前総理(75)の存在感が増すことになる。そこで今後はみずからの派閥を解散して政権の延命を図った岸田さんはひたすらその道を走る一方、全体としては麻生対菅の対立構造といった状況が続くのではないか」
鈴木氏は現在の混乱ぶりこそ「ガラガラポン」と見て、
「自民党内の現状は、派閥解散でなく再編のスタートと見ている。実際、元安倍派の福田達夫元総務会長(56)が早くも『新しい集団』を作るという動きを見せている。さらにもともと高齢で次が決まっていなかった元二階派は菅元総理と連携の動きが出ています」
今後、各派とも「ポスト岸田」で決め手を欠く、カオスの状況が続くことになりそうだという。
伊藤氏は、もはや延命に走るしかない岸田総理の姿をこう見る。
「かつて反主流の最弱トップで、周囲から〝三木下ろし〟に遭いながらもずっと総理の座を辞することがなかった三木武夫総理の姿がダブります」
岸田VS麻生第1ラウンドは「現役総理」にやや分がありそうに見えるが、ドロ船チキンレースの先はまだ読めない。