9月5日、日産自動車の西川廣人社長は、自身が株価に連動した報酬をかさ上げして受け取っていたことを認めて謝罪をした。不正の疑いがあるのは、株価連動型の報酬制度。2013年5月にいったん権利の行使日を確定したものの、当時は株価が上昇していたので、より高い1週間後に権利日をずらして当初より4700万円も多くの報酬を受け取ったというものだ。
前日4日に開かれた監査委員会が行った社内調査の報告書で判明したことだという。西川氏のほかにも、星野朝子副社長やハリ・ナダ専務ら5人ほどが類似の手法でより多くの報酬を受け取っていたようだ。
実はこの問題、既に世の中では知られていた疑惑だった。
「もともとはカルロス・ゴーン被告と一緒に逮捕された前代表取締役のグレッグ・ケリー被告が月刊『文藝春秋』のインタビュー取材に答えて明かしていたんです」(週刊誌記者)
これを受け、日産では社外取締役らの指示で調査を開始、お盆を挟んだ2カ月にも及ぶ調査で判明したという。正式には9日開催の取締役会で報告されるもようだ。
ちょうど5日はゴーン被告の公判前整理手続きがあった日だ。もちろんゴーン被告は「不公平だ」「(西川は)悪質だ」と批判の声を上げている。
調査結果の中身が漏れ伝わる中で、日産経営陣は一気に驚天動地に陥った格好だが、振り返れば西川氏が謝罪する前の3日に予兆があったのかもしれない。
「6月の株主総会で大株主である日本生命が西川社長の再任に反対していたことが報道で明らかになったんです。理由は、『(ゴーンの)不正を見逃していたため』ということになっていますが、ケリーが仕掛けておいた爆弾の件もあり、報酬の不正受給は知る人ぞ知る問題としてかなりの部分認識されていた形跡も窺えます」(同前)
ゴーン前会長の逮捕は現経営陣が検察と歩調を合わせたクーデターとの見方は根強い。ところが当の西川氏らが不正を働いていたとなれば、クーデターと検察捜査の正当性が問われることになり、ゴーン裁判の今後にも大きな影響を与えるだろう。
(猫間滋)