10月に勃発したイスラエルとイスラム組織ハマスとの紛争で、大きな動きがあった。
イスラエル政府報道官が11月22日、4日間の「休戦」と引き換えに、ハマスが拉致した人質少なくとも50人を解放することで合意したと発表したのだ。この発表に対し、ハマスも「人道的休戦」を歓迎するとして、イスラエルに収監されているパレスチナ人150人が釈放される予定だと声明を出した。
「イスラエル側は解放者が10人追加されるごとに休戦期間を1日ずつ延長するとの案を出しており、ハマス側もガザ地区にトラック300台分の食料や医療品が搬入されることで合意したと伝えています。この人道的休戦をきっかけに情勢が良化することを祈るばかりです」(国際ジャーナリスト)
だが、この問題の根深さはイスラエルとハマスの直接対決だけでなく、その背後で「支援」という名のもとに蠢く、シリアやレバノン、イラン、ロシア、北朝鮮などの国との複雑な関係性にあることは周知の事実だ。
そんな中、米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官が21日の記者会見で、「ワグネルがロシア政府の指示で、ヒズボラまたはイランに防空能力を提供する準備を進めている。これは前例のない防衛協力である」と指摘。イランは支援の見返りとしてロシアに対し弾道ミサイルの供与を検討している、と述べた。つまり、イスラエルとハマスとの紛争支援にかこつけて、両国間での軍事兵器交換が急ピッチで拡大しているというのである。
「カービー氏によれば、イランはこれまでもウクライナ侵攻を続けるロシアに対し多くの無人機や砲弾を供与してきたといい、9月にはロシアのショイグ国防相を招待。その際に供与を提案したのが、同国開発の短距離弾道ミサイルだった可能性があるとのこと。一方でロシア側は防空システムなど、過去前例のない規模で防衛協力を申し出たというのです」(外信部記者)
カービー氏は「ロシア、イラン両国間で急拡大する軍事協力は、ウクライナやイランの近隣諸国、さらには国際社会にとって有害」だとして、両国の連携強化に強い警戒感を示しているが、
「内戦状態が続くシリアでアサド政権を支援してきたのが、プーチン大統領の手先であるワグネル。ハマスを支援するヒズボラとワグネルとの間には長年に渡る深い関係があり、ヒズボラのバックにはイランがついている。つまり、イスラエルとハマスの軍事衝突とウクライナ戦争はつながっているのです。しかも、連日報じられるガザの映像によって、世界の人々のウクライナへの関心が落ちていて、結果的にプーチン氏にとって好都合な状況となっています」(同)
プーチン氏は22日、オンラインで行われたG20でウクライナ侵攻について問われ「軍事行動は悲劇だ。悲劇を止める方法を考えなければならない」と強調。それ以前には「ウクライナへの軍事作戦は、全世界とパレスチナの人々の運命を決める戦いだ」とも主張していた。
「休戦」が合意されても、侵略を正当化する為政者がいる限り、2つの戦争は終わりそうにない。
(灯倫太郎)