OpenAI・アルトマンCEOの“解任”お家騒動 マイクロソフトが漁夫の利

 マイクロソフトは20日、対話型人工知能「ChatGPT」を開発する米OpenAIを辞任したサム・アルトマン元CEOらが入社することを発表したが、同社の従業員700人余りを受け入れる可能性があることも分かった。もし、従業員らの移籍が実現すれば、マイクロソフトは濡れ手で粟との見方もある。

「今月17日、アルトマン氏は突如としてOpenAIのCEOを退任すると発表しました。同社は、アルトマン氏は取締役会に対して率直ではなく『今後もOpenAIを率いていくことに対して信頼できなくなった』との声明を出していることから、退任は事実上の解任であり、取締役会によるクーデターだったとみられています。すると、同日には同社の共同創設者であるグレッグ・ブロックマン社長も辞任を表明。19日にはマイクロソフトのサティア・ナデラCEOが社内のAIチームに両氏を引き入れることを明らかにしたのです」(ITジャーナリスト)

 アルトマン氏の退任を受けて、OpenAIの従業員らは取締役会に書簡を送り、「取締役会には監督する能力がない」と猛批判。さらに、全従業員770人中700人が署名したという書簡には、「マイクロソフトは我々全員にポジションが用意されていることを保証した」と、アルトマン氏とブロックマン氏を復職させない場合は一斉に移籍する可能性があることも表明。この移籍が現実のものになれば、マイクロソフトはOpenAIのメンバーをほぼ丸ごと手に入れられるわけだ。

「21日にはアルトマン氏のOpenAI復帰に向けた再協議がはじまったとの情報もあるので、まだOpenAIのメンバーがマイクロソフトに入社するのかは不透明なところもあります。ただ、電撃退任からわずか2日でアルトマン氏とブロックマン氏のスカウトに成功したナデラCEOは評価を上げていて、マイクロソフトの株価も急騰しています。マイクロソフトはOpenAIの株式の49%を保有する大株主ですが、トップ2人と従業員を社内に吸収できればマイクロソフトのAI研究は一気に進むでしょうし、革新的な企業イメージを呼び込むこともできます。また、アルトマン氏らがOpenAIに復帰したとしても、マイクロソフトはこれまで以上にOpenAIに対して優位になるので、どう転んでも今回の一番の勝者はマイクロソフトだと言えるのではないでしょうか」(同)

 マイクロソフトのAI事業はしばらく安泰なのかもしれない。

(小林洋三)

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