「最近、行為中に中折れしてしまう」「ビデオを観ても勃たない」「明らかに朝勃ちしなくなった」など、下半身の悩みを抱えている中高年は多いだろう。しかし、単なる〝老い〟としてスルーしていると、とんでもないことが起こる可能性があるという。専門家が「EDと突然死」のただならぬ関係を警告する。
加齢とともに元気がなくなる下半身。それは自然の摂理ではあるものの、明らかに異変を感じるEDの症状は、比較的すぐに自覚することができるという。薄毛治療やED治療を専門に扱う「Dクリニック新宿」(東京・新宿区)の小山太郎院長が話す。
「男性は性的に興奮すると、血液が流入して硬くなる仕組みですが、その状態が持続するから性行為ができます。相手とそういったシチュエーションになり、興奮しているのにまったく硬くならない、硬さが足りずに挿入できない、挿入できたとしても、行為の途中で中折れしてしまう‥‥こういった状態をEDと言います」(以下も「」内は同氏)
性行為の機会がない男性でも、グラビアや艶ビデオを観て「興奮しているのに硬くならない」といったことで気づくことができるし、「睡眠時の勃起」もEDか否かを測るバロメーターのひとつだという。
「睡眠中はレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返す中で、自律神経が乱れます。その一環で勃起し、その状態が朝に起こることを『朝勃ち』と言います。若い頃は毎日あったものが『そういえばここ1、2カ月ないな』ということで、異変に気づく人も多いのではないでしょうか」
こうした下半身のサインを見逃してはならない、と小山院長が強調する理由は、EDの背景には思いもよらない病気の片鱗がうかがえるからだ。
「19年に発表された海外の論文に『心筋梗塞や狭心症の病気を持っている人たちは、そうではない人たちと比べて、EDである確率が1.5倍』という報告があります。また、20年の同じく海外の論文に『EDに気づいてから3〜5年後に、心疾患が発生する』という報告もありました」
つまりEDと心疾患は何らかの因果関係があり、心筋梗塞や心不全といった突然死のリスクも急激に高まるというわけだ。
「心臓のトラブルも勃起のトラブルも、どちらも血管の老化によって起こるものです。健康な人でも加齢とともに血管のしなやかさは失われますが『どちらかの血管のみ調子が悪い』ということは起こりません。全身の血管が同じように老いていくと言われています」
血管の老化を加速させる要因は、高血圧や肥満、糖尿病、高脂血症、喫煙など。だが、健康診断でこれらの疑いを指摘されても、今の生活に支障がないし、病院に行くほどではないだろう、と放っておく人も多いはずだ。
しかし、こうした姿勢が「血管の老化を進めてしまう」という。
「心臓や脳の血管が老化しても、気づかないんですよね。ですがペニスの血管が老化すると勃起が損なわれ、すぐに気づくことができる。病院に行くきっかけにもなります」
実際、小山院長の元を訪れる中高年も多いという。
「まずはED治療をしつつ、このままだと心疾患などの病気が起こる可能性があることを説明します。もし健康診断を受けていない人なら、まずは検査、すでに高血圧や糖尿病などを指摘されている人には治療を勧めます」
EDは単なる下半身の問題ではなく、迫りくる突然死を食い止めるサインでもあるのだ。