知らなきゃよかった…前立腺ガンとEDの関係(2)全摘除術だと“フィニッシュ”できなくなる

 検査の結果、前立腺ガンが判明すると、進行度や年齢によって治療法は異なってくるが、泌尿器科専門クリニック「飯田橋中村クリニック」(東京都新宿区)の中村剛院長はこう説明する。

「まずは、根本治療としてスタンダードな『全摘除術』があります。再発しやすい若年層は手術か『放射線治療』、負担の軽減を優先で考える場合は『ホルモン療法』が選択肢に入ってきます。それぞれを併用することもあります」(以降のコメントは全て中村院長)

 ここで多くの患者が気にするのが、手術・治療後の男性機能についてである。男女の営みはできるのか? EDになるの? 

「やっぱり皆さん、心の中では思っていますよね。男性機能はどうなるんだろうと。それぞれの手術・治療を拒否する人がいるのも当然です」

 具体的には、どのような副作用があるのか。

「全摘除術は、尿失禁が起きます。長くて1年以上続くこともありますが、回復される人が多い一方、完全に治らない人もいます。また、精液を作る精せい嚢のうも摘除するため、勃起はするものの射精はできなくなります。射精感もなく、ただ、勃起するだけです。手術を受ける方にはこのことを納得してもらうしかありませんが、どうしてもイヤなら、放射線治療を勧めることもあります」

 女性ホルモンを投与するホルモン療法はどうか。

「勃起不全が起き、男性としての気力が下がり、性欲が減退し、更年期障害になってしまうこともあります。しかも一生続けなければいけない療法なんです。一方の放射線治療は、比較的、勃起不全などの副作用は出にくいですね。ただ、悪性度が強い場合は、放射線だと治りきらない」

 96年、前立腺ガンが判明した深作欣二監督(享年72)は、当時の不倫相手だった大物女優と「肉体関係が続けられないから」との理由で、ホルモン療法を拒否した…という逸話が残っているが、

「さもありなんですね。その頃と比べると治療法はよりよくなっていますが、ホルモン療法を行う段階ということは、進行した前立腺ガンだったんだと思います。もっと早期に発見していれば、ホルモン療法ではない治療で、EDにならずに済んだかもしれません」

 ただ、そうした副作用に絶望するのは早計だ。

「バイアグラでの治療や、尿失禁を改善するクスリを提案します。パートナーがいる場合は、パートナーとのスキンシップでメンタル面を満たすことができれば、男性機能低下のショックが、だいぶ和らぐはずです。最も大切な対策は、何よりも早期発見。早期ならより副作用の少ない治療法を選択できますから」

 生活習慣病などとは異なり、いくら健康的な生活を送っていても罹患する可能性があるのが前立腺ガン。男性のガン罹患数1位、しかもこれまでと同じ性生活が送れなくなるなんて、知らなきゃよかった‥‥なんて思わず、少しでも違和感を覚えたら、まずは病院に行ってみることだ。

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