株価の上昇が止まらない。去る5月17日、日経平均株価が約1年8カ月ぶりに3万円台に乗ると、22日の終値3万1086円で、33年ぶりにバブル後最高値を更新。「株価3万円時代」の到来で、庶民の生活はどうなる? 経済のプロが徹底解説する。
まずは経済アナリストの森永康平氏に株価上昇について解説いただこう。
「株価が3万円台に到達したといっても違和感はありません。そもそも日本市場には割安に放置されていた企業が多かったのが実情。業績もよく、成長しているのに、株価が追いついていない企業が多かったのです。そうした状況から、今年3月末に東京証券取引所が、PBR(株価純資産倍率)が継続的に1倍を下回っているような企業に是正を求め、すでに一部の企業は自社株買いなどの改善策を打ち始めました。〝物言う株主〟と呼ばれるアクティビストも同調して株主還元を強める声が高まったのも理由のひとつと言えます」
4月には世界的な投資家であるウォーレン・バフェット氏が来日。メディアの取材に対して、三菱商事、三井物産、伊藤忠、丸紅といった5大商社の株式の買い増しを示唆していた。
経済ジャーナリストの荻原博子氏が語る。
「国内ではコロナ禍がようやく収まって、アメリカで懸念されていた国債のデフォルト危機も一段落。もともと外国人投資家がこぞって日本株を買っていたところにバフェットが日本株への追加投資を表明したことで、日本人もつられて買っているというのが現状じゃないですか?」
株価が3万8915円(終値)の史上最高値をつけたのは89年12月29日。当時は超がつく好景気に日本中が沸いていたが、今はどうか。編集部内では「ブランド時計を買った」「海外旅行に行った」といった声はなく、威勢よく聞こえてくるのはカップ麺をすする音くらいだ。
「日本人で株を買っている人なんて、ごく一部の富裕層でしょう。余ったお金を低金利の銀行に預けても仕方ない。それじゃあ株でも買うか。そんな流れで市場にどんどんお金が集まっているのでは? でも低所得層や中間層を見れば給料は上がらないし、この物価高で日々の暮らしを守るのが精いっぱいですよ」
このように荻原氏が庶民の声を代弁すれば、森永氏は次のような見解を示す。
「当然ながら、株を買っていない人にはほとんど影響はないでしょう。ただ、株価が上がることで大企業は資金が調達しやすくなります。事業を拡大して利益を出せば、景気がよくなり、その結果として会社員なら給与が上がることもあるかもしれません。ただ、株価が暴落して不況になれば倒産する企業も出てきますし、失業者も増えます。下がるよりは上がったほうがいいという認識で十分だと思います」
だが、株高で浮かれている場合ではなさそうだ。
(つづく)