昨日の敵は今日の友。戦争になると、何が真実で何が嘘かわからなくなることは、ままあることだが、それにしても…と思わせる報道がロシア国内を駆け巡っている。
14日、米紙ワシントン・ポストは、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」創設者のプリゴジン氏が今年1月、ウクライナ情報機関と接触。その際、同氏はウクライナ国防省情報総局に対し、バフムトから撤退すればそれと引き換えにロシア軍の展開場所の情報を提供すると提案した、という仰天記事を報じたのだ。
この報道は今年4月、流出騒動で世界中を賑わせた米機密文書に基づくもの。記事によると、ウクライナ側はプリゴジン氏の言動を信用できないとして、この提案を拒否したという。
「ワグネルは1年近く最激戦地のバフムトでロシア側の主力部隊となってきましたが、弾薬が届かず多数の死傷者が出ているとして、これまで軍幹部を名指しで批判してきた。とはいえ、機密情報を敵側に渡したとなれば、国家反逆罪に問われ極刑に処されかねない。仮にプーチンとの距離が出来ているというのが事実でも、さすがにプリゴジンがそこまでリスクを冒す必要があるのか…。敵の敵は味方とも言われますが、現段階ではウクライナ、あるいは西側が仕掛けた情報戦という見方が強いです」(全国紙記者)
報道を受け翌15日、ロシア大統領府は「評価の高い新聞さえが報道してしまった馬鹿げたデマ」と一蹴したが、一方プリゴジン氏は、報道直後に接触を認めたものの、直後にSNSを通じて「馬鹿げている」と否定に転じたとされる。
「プリゴジンが正規軍を出し抜き、バフムト制圧の『手柄』を得ようと背信行為に及んだという見方も出来なくはない。15日に地元テレビ番組に出演したウクライナ国防省情報総局報道官は、記事に対する直接的なコメントは避けながらも、『ウクライナは領土の解放と国益の保護につながるのであれば、可能なことは何でもする』と含みを持たせた発言をしています。この発言が何を意味するものなのかにも注目が集まっています」(同)
ここ数日、イタリアやドイツ、フランス、イギリスと、ヨーロッパ各地を精力的に回り、それぞれの国から追加支援を取りつけたゼレンスキー大統領は、反転攻勢の狼煙を上げるタイミングを虎視眈々と狙っているといわれる。
プリゴジン氏は裏切り者かそれとも稀代の戦略家なのか…真実はどこに?
(灯倫太郎)
*画像はワグネルのSNSより