「夢のラーメン屋経営」でガッポリ儲ける方法(4)SNSやネット中傷のダメージ

 もう1つはSNSなどで発信される、店やラーメンへの批判コメントだった。

「1日20杯限定のイベントメニューをツイッターで告知して集客に繋げるなど、現代の飲食店には店側からの発信力が必須で、SNSやインターネットはどうしても利用せざるを得ません。ですが、お客さんの感想が励みになる一方、どうしても、『おいしくない』だとか『もう行かない』といったマイナスの意見も目に入ってくるんです」

 ラーメンは国民食であるだけに、悪い言い方をすれば「ニワカ評論家」が出やすいグルメだと言える。中には「腹を壊す」などの度を越した誹謗中傷、人格否定的なコメントまで見受けられたこともあったという。石動氏は司法書士でもある。あまりにもひどいコメントには削除請求を出し、発信者を開示して裁判で責任を問おうと考えた。だが、

「今、飲食店のレビューで一番利用されているのが『Google』なんですが、発信者の特定は頑として認められなかった。アメリカの企業ですから、日本の警察も『これ以上捜査ができない』と打ち切ってしまいました。1件1件のコメントに法的に正当な手続きを踏んで、そのためにお金をかけて対応する、というのは事実上不可能に近かった」

 1人の悪評に気を揉むような性格では今どきのラーメン屋経営は難しく、ある程度は受け流す「スルースキル」が必須となる。こうした様々な理由が重なり閉店を決断した石動氏だが、実体験をこう振り返る。

「例えば早期退職をされて、退職金を使って蕎麦屋や喫茶店など何か飲食店をやりたい、という方もいるでしょう。ですが、駅前一等地のテナントがあいたから、といきなり大勝負に出るようなことはやめてください。いきなりリスクを背負って失敗し、何も残らなかった、というケースの方が多いから。駅から遠くて小さな店でも、最初はいかに赤字のリスクを避けるか、というところから考えてほしいです。私も、今の状況が自分のキャパシティを超えて店をいったん閉めることになりましたが、経営と煮干しラーメン作りのノウハウは残りました。チャンスがあれば、東京のように集客率、回転率の高い場所でもう一度チャレンジしてみたいと思っています」

 石動氏の新しいラーメンが食べられる日が待ち遠しい。

*週刊アサヒ芸能2月9日号掲載

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