昨年公開された中国映画「革命者」で毛沢東役を演じたほか、国家安全保障をPRする公共広告にも出演するなど、国民的俳優として人気の俳優リー・イーフォン(李易峰)が、金銭を介した性交渉をもった疑いで警察当局に拘束されたことが明らかになり、ファンの間に大きな動揺が走っている。
異変の始まりは、10日夜に放送予定の国営テレビ・中央電視台(CCTV)の特別番組「中秋晩会」の番組表から、オープニングを飾るはずだったリーの名前が突然削除されたこと。これに中国のネット上は騒然となったが、彼の名前が消えたのはそれだけではなかった。
「リーは中国最高検察院の重点活動のイメージキャラクターに起用されているのですが、同院のホームページからも彼の写真が削除されていることが明らかになりました。さらに中央宣伝部の学習アプリ『学習強国』、中国のエンタメ賞・金鷹奨や華鼎奨のホームページからも、彼に関する情報が全て削除されていることがわかり、さらに騒動が大きくなりました」(中国事情に詳しいライター)
すると、その騒動を受ける形で11日午後、北京市公安局が中国版ツイッターのウェイボーで、35歳の俳優「李某」に複数の買春行為が発覚し、本人も自供したことで身柄を拘束したと発表。同日には人民日報ウェブ版などの中国メディアが、一斉にリー・イーフォンの実名を挙げて報道するに至ったのである。
リーは、四川省成都市出身の35歳。2009年に、日本のアニメ「テニスの王子様」が原作の青春ドラマ「加油!網球王子」でドラマデビュー。11年、「恋愛恐慌症」で映画デビューを飾ると、14年には映画「ロクさん」で初の主演を務め、人気俳優としての地位を確立。そして昨年、中国共産党建党100周年記念映画「革命者」で毛沢東役を務めた。
「実は今月2日、リーが浙江省杭州市でのイベント出演をドタキャンし、後日〈新型コロナの影響で現地に行けなかった〉とライブ配信した際にも、ネット上では彼が買春容疑で公安局に拘束され、今月初めに釈放されたとの噂が飛び交っていたんです。この時点では悪質なデマと思われていたのですが、今回は具体性を帯びていますからね。しかも、10日にリーの事務所がウェイボーに掲載した疑惑を否定するコメントも、11日未明には削除されているのです」(同)
報道を受け11日には、リーとイメージキャラクター契約を結んでいるロレアルパリをはじめ、プラダ、パネライ、本間ゴルフなどが契約の打ち切りを発表。動画配信サービス各社もリーの出演場面を一部削除し、早くもその存在は消えつつある。
「一介の役者ならともかく、中国共産党創立100周年を記念して作成された映画で毛沢東役に抜擢されるほどの国民的な俳優です。中国共産党としては、メンツもあるでしょうから、おそらく徹底的に彼の存在をメディアから削除していくことになるはず。もはや、中国国内での俳優活動は絶望的です」(同)
すでに街中に貼られた彼のポスターはすべて撤去されたというが、中国政府の“手際の早さ”には舌を巻くばかりだ。
(灯倫太郎)