最高の幕開けのはずが、悪夢と変わった。25日開幕戦の阪神—ヤクルト戦。最大7点差をつけていた阪神が、終盤にひっくり返されての逆転負け。8回を任された斎藤友、岩崎優が立て続けに失点し、一気に1点差まで詰め寄られると、9回に新守護神ケラーが山田、サンタナに一発を浴び、3失点という惨劇。絶対的抑えのスアレスを失った穴をまざまざと見せつけられた。
ケラーについては3月23日、オリックスとの2軍戦から不安要素があった。1イニングを「0」に抑えたものの、いきなり連打を浴びている。矢野燿大監督はケラーのクローザー起用を明言していたが、「本当に大丈夫か?」の声も出ていたのだ。
「来日したのが3月6日。調整がまだ不十分との評価も聞かれます」(在阪記者)
関西キー局の“阪神の応援番組”に出演したOBも、日米のマウンドやボールの違いに関する不慣れを指摘していた。
「ケラーが日本のマウンドに慣れるまでの間、岩崎優で凌ぐべきとの意見も聞かれていたのです」(同)
それだけではない。バッテリー間の違和感もあるようだ。そもそも、ケラーは160キロ近い直球に自信を持っている。その点は梅野、坂本らのトラ捕手陣も認めているが、彼らが要求する変化球はスライダー。縦に鋭く曲がる軌道にトラ捕手陣は「使える!」と確信を持ったが、ケラーはカーブを使おうとする。
「ケラーの投げるカーブは、高めに抜けてそこから大きく落ちてくる感じ。近年、そんな軌道のカーブを投げる日本の投手は見当たりません」(球界関係者)
しかし、捕手陣は「落差の大きさ」こそ認めていたが、落下箇所が高めなので長打を食らう危険性を感じているという。ケラーは「なんでカーブを投げさせてくれないんだ?」の心境だろう。そんな、来日の遅れによる“コミュニケーション不足”も懸念されているのだ。
「一方で、評価が急上昇している右腕が湯浅京己です。26日の開幕第2戦は8回に起用され、3人でピシャリと抑えた。ケガが多くプロ入りしてからの過去3年間は、ほぼリハビリと調整でした。球威もあり、クローザーも務まるのではないかと」(同)
矢野監督が期待していた一人ではあるが、クローザーでテストする時間もなかったようだ。結局、ケラーで“見切り発車”した矢野監督。ラストイヤーは勝利の方程式づくりで“ストレスとの戦い”となりそうだ。
(スポーツライター・飯山満)