メジャーコンテストで高い実績をあげながらも、副業から手を引くことができないお笑い芸人がいる。ゾフィーのサイトウナオキはそんなひとりだ。
ゾフィーは「キングオブコント」(以下KOC)17年と19年のファイナリスト。サイトウは、生活のためにバイトを辞められない芸人ではない。会長の座に上りつめたため、経営から手を引けないのだ。
サイトウは、30代前半で一度芸人を辞めている。そのとき、潰れそうな居酒屋を任せてもらうと、店長に昇格。1年で前年比200%、翌年に150%の売り上げを達成した手腕が買われて、会長に就いたのだ。
一方、KOCで優勝しながらも、生活費の主軸が副業という稀有な芸人もいる。13年の覇者である、かもめんたるの槙尾ユウスケだ。
相方の岩崎う大とは早稲田大学のお笑いサークル「WAGE」で出会って、コンビを結成。岩崎は俳優や脚本家、作家としての才能を認められ、多分野で活躍。だが、槙尾は迷走。コントではじめた女装を本格的に追求したものの、ビッグマネーをつかむには至らなかった。コントの頂点に立ったあとも、ピン芸人のヒロシが経営していたカラオケパブにてランチタイムのバイト。しかし槙尾は、これがきっかけとなって、20年1月に東京・三軒茶屋でスパイスカレー専門店「マキオカリー」をオープンさせた。
「駅から徒歩5分ほどのところにある店は、芸人が日替わりで働くバー『PUNCH LINE』。『マキオカリー』は、ここでランチタイムのみ営業する“間借りカレー店”なのです。『神田カレーグランプリ2019』で優勝したカレー店『カリガリ』とのコラボに成功した現在は、『カリガリマキオカリー』になりました」(フードライター)
同店では、17年の「女芸人NO.1決定戦 THE W」で2位だった牧野ステテコがバイト。槙尾本人も、しょっちゅうカウンターに入っている。芸人仲間が多く来店して、SNSなどでPRしているため、絶品スパイスカレー店としてジワジワ浸透。すべてランチタイム限定ながら、池袋店、新宿店、五反田店も出した。五反田店は、さらば青春の光が運営に携わっているダイニングバー「さらばBAR五反田店」の間借り。さらばは、KOCの決勝戦に6度も進出しているため、槙尾とはいわば戦友だ。
終息が見えないコロナ禍で、ダメージを食らっている飲食業界。KOCと同じく、サバイバルに勝ち残ってほしい。
(北村ともこ)