プロ野球のキャンプシーズンが始まる。注目は、横浜DeNAベイスターズだ。順調に春季キャンプを終えれば、三浦大輔監督はビジネス界からも脚光を浴びることになりそうだ。
「野球界は上下関係が厳しいことでも有名です。三浦大輔監督が新しいコーチングスタッフとどんな組織を作り上げていくのか、興味深く見ています」
これは、ビジネスマン向けの経済誌や単行本を発刊する出版社の編集者から出たコメントだ。普段、プロ野球のニュースを取り上げることが少ない経済誌が三浦監督に注目した理由は、新しいコーチ人事にあった。
「主要コーチは三浦監督よりも年上です。“年上の部下たち”とどんなコミュニケーションを取るのか、と」(ビジネス誌編集者)
たしかに今季のDeNAは“年上コーチ”が目立つ。昨季だと、青山道雄ヘッドコーチ、田代富雄・巡回打撃コーチの2人のみだった。しかし今季は、石井琢郎・野球総合コーチ、鈴木尚典・打撃コーチ、斎藤隆チーフ投手コーチが加わり、年上コーチは5人となった。
「斎藤コーチは三浦監督と同じ91年ドラフトの同期です。生涯成績、チーム貢献度では三浦監督のほうが上ですが、斎藤コーチは1位、三浦監督は6位指名でした」(球界関係者)
年上コーチたちの肩書からしても、参謀役や、投打の要所を託すことになるので、年下コーチばかりだった昨季のように“命令形口調”では指示を出しづらいだろう。選手起用で意見が分かれた場合、三浦監督が折れる場面も出てきそうだ。
「DeNAが親会社となって以降、旧ベイスターズ時代に他球団へ移籍してしまった選手も呼び戻そうという動きが出てきました」(スポーツ紙記者)
昨季の采配を見る限り、三浦監督は不振選手も我慢して起用し続けた。復調のきっかけを与えるためだが、勝利を強く意識すれば、心を鬼にしなければならない場面もあるだろう。温情と非情、そのさじ加減を年上コーチたちがサポートしてくれたら良いのだが…。
「期待している選手がしっかりと成績を残せるよう、三浦監督は年上コーチたちにも指示を出さなければなりません。年上コーチたちも立場をわきまえているはずですが、お互いに気を遣いながらとなりそう」(同前)
年上の部下ができるのは、ビジネスの世界では珍しくないが、全てが成功しているわけではない。また、会社組織内において、年齢が理由でコミュニケーションに悩んでいるビジネスマンも少なくない。
今季のベイスターズは、よきモデルとなることができるのか。昨季のヤクルト同様、最下位からの優勝となれば、三浦監督を取り上げたビジネス指南書も制作されるだろう。
まずは年齢を気にしない組織作り、キャンプがその第一歩となる。
(スポーツライター・飯山満)