巨人スカウト部長に水野雄仁氏が就任した(10月7日)。同職は2020年4月から空位となっていた。水野氏は11日のドラフト会議にも出席する予定だが、「新体制の船出」と表現するメディアもあったが、そんな安直なものではない。原辰徳監督による“チーム強化策の最終形態”と言っていい。
「キャンプイン直前の今年1月、投手陣の強化策として桑田真澄コーチが入閣したときと状況が似ています」(球界関係者)
桑田氏のコーチ就任は、今年1月12日。当然、2021年のコーチングスタッフは発表済みであり、原監督の発案と強い要望によって、実現された。水野氏のスカウト部長就任の仕掛け人も原監督だ。
またその2日前、原監督は阿部慎之助二軍監督を作戦担当で一軍コーチに配置換えしている。「自分の目の届くところで、阿部、桑田両コーチを育てていく」ということなのだろうが、水野スカウト部長の場合は少し違うようだ。
「ドラフト指名候補を見極めるのが仕事ですから、原監督の名代とも言えます。原監督と評価が同じで、さらにプラスアルファの見極めができなければ務まりません」(同前)
1年以上もスカウト部長職が空位になっていたのは、そのせいだろう。近年、巨人はドラフト1位指名選手が活躍していない。原監督を始め、現場スタッフは「即戦力」の報告も受けていたとされるだけに、当然スカウト陣への不満もあったという。
「水野氏は長嶋監督時代にコーチをしていたころ、特命を受けて石川雅規(現ヤクルト投手)を視察したこともありました」(スポーツ紙記者)
それだけではない。水野氏は昨年7月、夏の甲子園予選で東東京大会を視察している。目撃した高校野球専門誌の記者がこう言う。
「二松学舎大付属高の試合で水野氏を目撃しました。お目当ては秋広優人(現巨人)で、他球団のスカウトも球場入りしていましたが、どの球団も当時の秋広を『ピッチャー』として見ていました」
しかし、原監督は秋広の「打者センス」を水野氏たちに確認していたという。
「秋広は高校通算23本塁打を放っています。ただ、公式戦ではゴロ・ヒットも多かったので 打者としてのインパクトは薄かったはず。なのに、開幕一軍を争うレベルにあったことを見抜いたんですから、秋広を見ていた巨人スカウトチームは、本当に先見の明があったと思います」(前出・専門誌記者)
今年のドラフト会議は10月11日。“水野新部長”を中心とした新体制では、下位で高校生球児を大量に指名してくるのではないだろうか。阿部、元木、桑田らが現場を託されたとするならば、水野部長はもっとも大切な逸材発掘を担うことになる。責任は重大だ。
(スポーツライター・飯山満)