「コロナ離婚」という言葉を聞くようになってから久しい。在宅勤務が増えたことで家庭内不仲や家事格差が浮き彫りとなったり、長引くコロナ不況によって世帯収入が減少したりなど原因は様々だが、ここにきて夫婦間の新たな火種が生まれてきている。
「先月、妻から離婚を言い渡されました…」と疲弊した面持ちで告白するのは、都内の学習塾で教室長を務める柴田浩一さん(仮名、38歳)。夫婦間の亀裂の原因は新型コロナワクチンの接種をめぐってだったという。
「私の職場では、強制ではありませんが、暗黙の了解として社員はワクチンを打たなければなりません。学習塾では多くの児童や学生を預かっているため、私が感染源になっていたとなれば大問題になりますからね。それに私自身も色々調べた限り、ワクチンは打った方がいいと判断したため、先月末に早速接種の予約を入れて来月に打つ予定です。しかし、そのことを知った妻は『あなたがワクチンを打ったら私にまで健康被害が出る!』と、意味不明な理由で大激怒。私が『仕事柄打たないわけにもいかない。ただ君が打つ、打たないは自由にしたらいい』と説明しても納得してもらえず…。妻は『離婚する!』と言い残して実家に帰り、まだ戻ってきていません」
コロナワクチンの安全性については両論あるが、まず大前提としてそもそもワクチンは副反応がゼロということはなく、一定の確率で起こりうるもの。しかし、上述のようにワクチン接種者のせいで非接種者に健康被害が出るなんてことはありうるのだろうか。医師はこう解説する。
「たとえば、ワクチン接種者の息や汗で抗原曝露が起きるという噂がありますが、これは完全なデマです。治験実施計画書には必ず『ワクチンの薬液に触れてしまったり、接種者のパートナーが妊娠した場合は、安全性確認のために製造元に報告するように』といった定型文が書かれているものですが、この文言が歪曲されて広まってしまったのでしょう。次に、ワクチン接種者と性交渉した女性は不妊症になるという噂もありますが、これも全くのデタラメです。この噂の元ネタは、ファイザー社元副社長のマイケル・イードンという人物が流した動画でした。その内容は、ワクチンによって作られた抗体が、胎盤を作るタンパク質を攻撃するため、不妊症になるというものでしたが、そんな事実はありません」
玉石混淆の情報群の中から素人が真実を見つけ出すのは至難の業だ。しかし、夫婦仲に亀裂を生じさせないためにも、お互いに医学リテラシーを高め、共有していくほかないのかもしれない。
(橋爪けいすけ)