7番勝負の王位戦は最大9月28・29日まで予定されているが、その最中の7月25日からは叡王戦(5番勝負)が始まる。今度は王者・豊島に対し、挑戦者・藤井と立場を変えての対局となるが、合わせて最大12番勝負のダブルタイトル戦という長丁場。それだけに、王位戦第2局は是が非でも一矢報いたいところだ。深浦九段は、
「豊島竜王が先手番なので、主導権を握ってどんどんリードを奪いにいくことになる。そこを藤井王位はしっかり準備しておかなければ、1局目と同じ結果になってしまう。ただ、藤井王位は今まで勝てなかった相手にもしっかり対局を重ねて、勝てるようになってきている。豊島竜王対策は最も大事だが、そこが第2局で見られると思います」
と予想していたが、その通りの結果となった。
実は公式戦で藤井二冠に勝ち越していたのは、天敵・豊島竜王の他にもいる。その次鋒が2勝3敗の久保利明九段だが、7月6日の順位戦で藤井二冠はその久保九段を下し、星を5分に戻しているのだ。
今年5月、王座戦挑戦者トーナメントで藤井二冠の20連勝を阻止。対戦成績でも2勝1敗と勝ち越しているのが深浦九段だ。
「藤井二冠など強い相手と戦うと、モチベーションがマックスになる。正直、自分の子供のような年齢ですから、やりにくい。ただ、盤上で年齢のことなど考えると、かなり危険な状態になってしまう。なにしろ藤井王位はトップ棋士ですから。盤上ではそうしたことに意識が戻らないように戦っています」
王位戦第2局は、藤井二冠の地元・名古屋から北海道・旭川へと場所を移す。新幹線では富士山が見える好席をキープする鉄道好きとして知られる藤井二冠は7月4日の会見で、
「最近、鉄道に乗る機会も少ないが、王位戦第2局で乗る予定なので、それは楽しみにしたいと思う」
こう述べて笑顔を覗かせていた。第2局の切り替え戦で天敵に「お得意様」を返上し、反撃ののろしを上げる「藤井無双」を見せつけた。
*「週刊アサヒ芸能」7月22日号より