アメリカの“分断”を30年前に予言!? 中国で高額取引される話題の書とは?

「皆さん、2019年の香港における修正案に対する抗議運動に対して、アメリカの一部の人たちがメディアに対して何と言ったか覚えていますよね。中国のネットユーザーたちも強い関心を持ってこの騒動を注意深く見ています」

 1月7日、中国の華春瑩(か・しゅんえい)報道官は1月6日に発生したアメリカ連邦議会への乱入事件について、2019年に香港で起こった民主化デモを引き合いに出して語り始め、こう締めくくった。

「現象が同じなのに表現が全く異なるのは興味深いことです。私たちはこの事実を深く見つめなければなりません。コロナ禍で大変な中、アメリカ人民の平和と安定、安全を祈ります」

 2019年に中国政府の意向で香港の自治を認める「1国2制度」を取り止めようとすることに対して香港の住民が反対デモを行ったことと、今回の乱入事件は同じ「暴動」であるにもかかわらずアメリカ人の反応が違うということで、矛盾を指摘したかったようだ。

 デモと暴動は違うのだが、それをわざと混同して「あれ、おかしいねえ」などと言いながら、しかも最後はアメリカ市民を気遣うあたり、なんとも上から目線で、「他国についてとやかく言う資格はあるの?」という本音が聞こえてきそうなのだ。

 今回のアメリカの事件は、中国の政府高官の目にどう映っただろうか。目下、世界の覇権争い真っただ中のいわば“敵国アメリカ”で、しかも自由と民主主義を旗印とするアメリカ国内でその旗印が崩壊しかけているというのだから。

 ということで、アメリカの分断に注目が集まる中国国内では、あたかも今回の事態を1991年のちょうど30年も前に“予言”していたとされる本が高値で売れているという。

 その本のタイトルは、「美国反対美国」。美国とは中国語でアメリカのことで、英語版だと「America Oppose America」。日本語訳すれば「アメリカ対アメリカ」ということになる。確かに、タイトルからすれば今のアメリカが置かれた状況を語っている。だから中国のインテリ層はこぞってこの本を買い求めようとしているのだとか。

 それを伝えるアメリカの通信社の記事によれば、中国国内のオンライン古本マーケットで日本円にして約27万円もの高値で出品されているという。もう30年も前の本なので、当然、一般書店では手に入らず値段が高騰しているのだ。

 しかも書いた人物は王滬寧(おう・こねい)という人で、中国共産党政治局常任委員という序列で言えば「ナンバー5」というれっきとした御仁。経歴を見れば元々は有名な政治学者で、アイオワ大学やカリフォルニア大学に留学してアメリカの政治システムと政権交代システムを調べつくした人物とある。となれば、確かに読みたくなるのもわかる。

「中国の政治の世界では知米派のアメリカ留学組を留美派といいますが、その留美派の王が2017年に中国執行部のメンバーに入ったのは中国共産党始まって初めてのことです。彼は江沢民、胡錦涛、習近平の歴代3トップのブレーンとなったわけですが、それぞれの指導理論は王が構築したものとされています」(中国事情に詳しいジャーナリスト)

 まさに予言的中となれば今回の騒動も織り込み済みということになって、バイデン次期大統領との付き合い方も理論化されているということか? それは1月20日の就任後にわかるだろう。

(猫間滋)

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