風が吹けば桶屋が儲かる。ある出来事が起こったら、一見すると全く関係のない所にまで影響が及ぶという意味の諺だが、同じように、コロナ禍の影響で車が思うように作れないという。ロックダウンで車の工場が閉鎖にでもなったせいかと思うかもしれないが、そうではない。半導体が足りないのだ。
「今や車は『走る半導体』と言われるくらいコンピュータに依存していて、パワステ、エアバッグ制御、ETCなど、特に電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV)といった高級車ほど多くの半導体が必要となります。ところが世界的にこの車載用半導体の供給が追いつかなくて、海外の自動車メーカーでも減産が相次いでいるんです」(経済ジャーナリスト)
例えば国内組のホンダはフィットを月4000台減産、日産もノートを減産すると伝えられている。もちろん世界的な現象なので影響は国内に限らず、ヨーロッパのフォルクスワーゲン、ダイムラー、アメリカのフォード、フィアット・クライスラーなども減産もしくは一時的な停止に追い込まれているという。トヨタでは中国での一部生産ラインを中止していたが、その後、車載用半導体調達のメドが立って再開したとも伝えられている。
半導体不足で車が作れないというのも、いかに現代の車がハイテク化されているかを物語る事象として面白いが、なぜそんなにも半導体が不足しているのか。その理由は2つあるという。
「1つは第5世代次世代通信システム、いあわゆる『5G』に対応するスマホ、関連機器での需要が増えていること。もう1つは、コロナの巣ごもり需要でパソコンやゲーム機のほうへ流れてしまっていることです」(前出・経済ジャーナリスト)
昨年にはソニーのプレステ5、マイクロソフトのXbox Series Xといった次世代機がリリースされるや売れに売れた。ゲーム機の需要が高まったのは既に知るところだ。また、リモートワークやテレワークの普及でパソコンも良く売れた。そもそもこういった働き方を支えるのがICT(情報通信技術)ということもあって、その関連機器の需要も含めれば、自動車向けの半導体の確保が難しくなっているのもわかる。
昨年12月の第1週で世界の半導体販売額は前年比で10%も伸びて約1兆4000億円を記録しているという。人やモノに触れないニューノーマルな社会の実現は半導体あってのものだが、自動車業界にとっては新たな重要課題となりそうだ。
(猫間滋)