アメリカ「WHO脱退」で脚光、トランプ大統領のWWE時代とプロレス政治

 新型コロナへの対応をめぐり、かねてから「WHOは中国に支配されている」と非難していたトランプ大統領が5月29日、ついにWHOからの脱退を表明した。

 このニュースを受けネット上では様々なコメントが飛び交ったが、そんな中《まるでプロレス団体を脱退したニュースみたいだ!》とのツイートが話題になった。

 というのも、実際トランプ氏とプロレス界の関係は深く、特にWWEとは昵懇の間柄、というのはよく知られる話。

「関係が始まったのは1988年、ニュージャージー州アトランティック・シティで、自らが所有するトランプ・プラザ・アンド・カジノがホストを務める形で、WWEの興行がおこなわれたことがきっかけです。以来ずっと良好な関係は続き、2007年にはトランプ氏本人が『億万長者対決』と題された試合に参加。WWEのオーナーであるヴィンス・マクマホンとトランプ氏、双方が代理レスラーを立て、負けた方が頭を丸坊主にされる設定で、結果試合はトランプが勝利し、マクマホンがバリカンで頭を剃り上げられ、当時は大きな話題になったものです」(スポーツライター)

 そして、レスラーたちのマイクアピール術が、「トランプ節」の起源となっている、というのは米在住のジャーナリストだ。

「アメリカではよく『トランプの語彙は小学4年生レベル』と評されますが、彼は名門・ペンシルヴェニア大学で学士号までは獲っていて、学歴は低くない。にもかかわらず、あえて難しい言葉を使わず、身振り手振りを交えながら特徴的な口調で、しかも幼稚ともとれる粗野な言葉を繰り返すのは、リング上でレスラーが観衆をよりエキサイティングに盛り上げていく、あのパフォーマンスと全く同じ手法。さらに、プロレスの世界には、善玉(ベビーフェイス)と悪玉(ヒール)の2種類のレスラーがいて、それぞれがきちんと役割を果たすことで、観客をストーリーに引き込んでいく。トランプ氏はこれを政治の世界でも踏襲しているわけです。もちろん善玉はアメリカ。そして悪玉が中国などで、今回はWHOだったということでしょう」

 そんなトランプ氏は5月30日、米ツイッター社から「暴力を賛美する内容は禁止」とする利用規定に違反した、として「警告」処分を受けた。

「理由は白人警官に膝で首を押さえつけられた黒人男性が死亡した事件を受け、米ミネソタ州ミネアポリスで抗議デモや暴動が相次いでいることに対し、略奪者を”ごろつき”と呼び、”州兵を送り込む”とツイート。さらに”略奪が始まれば、発砲が始まる”と警告したしたためですが、2つ目のツイートについてはさすがにツイッター社も見逃すことが出来ず、トランプ氏によるツイートの上に警告をかぶせ、クリックしないと表示されないような対策を施されましたが、だからといってトランプ氏の”口撃”がこのまま大人しくなることはあり得ない。マクマホンを丸刈りにした以上の更なる過激なパフォーマンスが飛び出す可能性は大きいですね」(前出・ジャーナリスト)

 やれやれ、お騒がせ大統領のプロレス政治に巻き込まれるアメリカ国民の心情はいかに……。

(灯倫太郎)

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