アメリカ人クルーズ船乗客の“救出チャーター便”が羽田空港に降りたったワケ

 横浜港周辺に停泊しているクルーズ船のダイヤモンド・プリンセス号から2月17日朝、アメリカ人乗客の一部がアメリカ政府のチャーター便で帰国の途に就いた。乗客たちは自衛隊が運用するバスで羽田空港に向かい、2機のチャーター機に分乗。アメリカ到着後は武漢市からの避難民と同様に、米軍基地内で14日間の検疫措置を受けることとなる。

「羽田空港に飛来したのは米カリッタエアのB-747貨物機。機内では金属むき出しの床にエコノミークラスのシートが臨時で取り付けられており、飲食物はクーラーボックスに入っているものを各自が摂る方式。乗客同士は握手など肌が直接触れる行為を禁じられています。2階のコックピットと乗客のいる貨物室は完全に隔絶されており、乗り降りのルートも別。乗務員に感染が及ばないよう、同貨物機が選ばれたのでしょう」(飛行機事情に詳しいトラベルライター)
 
 そのチャーター機に関してネット民からは「なぜ羽田空港に?」との声もあがっている。カリッタエアでは普段から米軍チャーター機として日本の米軍基地にも飛んでおり、横田基地への飛来経験も豊富。それならアメリカ政府がコントロールできる横田基地を利用するほうが都合が良さそうだ。そこをなぜ、世界でも最も忙しい空港の一つに数えられる羽田空港を利用したのだろうか?

「最も重視されたのは、移動経路でしょう。横浜港から羽田空港までは23キロほどと近いうえ、経路のほとんどが首都高速道路なのでほぼノンストップでの移動が可能。深夜なら移動には30分もかからなかったはずです。それに対して横田基地までは最短ルートでも55キロ以上ありますし、同基地が高速道路から離れた場所にあることから、けっこうな距離の一般道を走る必要もあります。それゆえ感染防止を含めたトラブル防止の観点から、最も迅速に移動できる羽田空港を使うのは理にかなった話です」(前出・トラベルライター)

 乗客を運んだバスはチャーター機に横付け。旅客ターミナルは利用しておらず、そこでも感染防止に配慮した形だ。ただ、移動距離が問題なら、横浜港から30キロ弱の厚木基地を使うという手はなかったのだろうか?

「厚木基地では、日米政府間の合意により22〜6時の発着が禁止されています。米軍の態勢を保持する上で緊要と認められる場合は例外となりますが、今回のケースは該当せずという判断でしょう。また厚木基地も高速道路からは離れており、一般道を走る必要があるため、それも同基地を除外する理由になったはずです」(前出・トラベルライター)
 
 ただ、こうした対応も少々遅すぎた感はあるが…。

(北野大知)

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